ひなたぼっこが大好きだったムギ
夏の前くらいに動物病院の先生から「高齢猫は暑さに弱いから気をつけてください」と言われた。どのくらいの室温がいいか訊いてみたら「預かっている猫ちゃんの部屋は25度設定にしています」と言われて驚いた。
猫が快適と感じる温度は人間よりだいぶ高いと思いこんでいたからだ。実際ムギは28度の部屋と32度の部屋があれば迷わず32度に行くタイプだった。
ネットでも調べてみたら、諸説あるものの、夏は26度~28度、冬は20度~23度くらいをすすめている情報が多かった。
これは成猫の場合で、子猫は少し高く、老猫は少し低くなるらしい。
さらに個体差ももちろんある。人間だって暑がりの人と寒がりの人では快適温度が全然違うものだ。猫も実際の様子をよく観察して室温を調節してあげる必要があるだろう。
ムギは先にも書いたようにとにかく暑いのが好きで、ひなたぼっこマニアと言ってよかった。冬はもちろん、夏もわざわざ日中の窓辺で寝転がるのだ。35度を超える猛暑日でも同じことをするのにはまったく呆れた。
一昨年までは好きなようにさせていたが、去年の夏、すでに慢性腎臓病の発覚から3年経ち、脱水対策の皮下輸液も始めていたので、さすがに身体が熱々になるのはよくないのではないかと思い、ひなたぼっこは午前中だけにさせた。午後は南向きの掃き出し窓をバリケード封鎖したのだ。
今夏はもっと厳しくひなたぼっこを制限しなくてはいけないだろうかと考えていたら、ムギの方が先に動いた。梅雨明けごろから2階に行かなくなったのだ。1階にはいいひなたぼっこスポットはないから、これはひなたぼっこをしなくなったということである。
階段の昇り降りがきつくなってやめた可能性もあるが、たぶん違うと思う。21歳になり、はじめて暑いのが嫌になったのだ。
体温が下がり、好む気温も下がった
以前はムギがいる部屋のエアコンは人間にはちょっと暑い30度くらいにしていた。それより下げると他の部屋に行ってしまうからだ。
先生の話と、ムギが暑い2階に行かなくなったことを考え、1階の温度設定を27~28度にしてみた。ムギは出て行かなかった。それで満足なようだった。好む室温が変わったのだ。
多くの猫が好む温度はあるだろうけれど、それを鵜吞みにするのではなく、うちのコの好みを知ることが大事だと思う。そして、年をとったり病気になったりすると好きな温度が変わることがあるのにも注意しておかなければならない。
好む室温が変わったこととたぶん関係があるのだろうけれど、最後のころムギの体温は少し低くなっていた。以前ははっきり人間より高くて、ぼくは体温が高い方で平熱が37度近くあるが、それでもムギにさわるといつも「ムギは温かいな」と感じた。それが最後のころは「同じくらいかな?」と感じるようになっていた。
死期が迫ると体温が下がる、それにともなって涼しい場所に行きたがるようになると、多くの人がネットや本に書いている。ムギの体温が下がって、嫌な予感はした。
ただ涼しい場所に行く方は顕著ではなかった。コンクリートの玄関やひんやりしたフローリングを好むということはなく、最後まで毛布の上が好きだった。
どの猫にもだいたい共通して起こることもある一方で、1匹1匹みんな違うこともあるのだろう。
(by 風木一人)
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