
版画とちいさなおはなし(22)
きりんは花壇に行って、バラに尋ねました。 「きみの花びらを貸してくれない? 体に貼り付けて模様にしたいんだ」 「私の花びらは全部私のものよ。貸すなんてとんでもないわ」 きりん...
芳納珪の私設レーベル。ワクワクする空想冒険譚をお届けします。
きりんは花壇に行って、バラに尋ねました。 「きみの花びらを貸してくれない? 体に貼り付けて模様にしたいんだ」 「私の花びらは全部私のものよ。貸すなんてとんでもないわ」 きりん...
実家の納戸にあった古い植物図鑑を見ていたら、奇妙な見開き記事があった。並んでいるのは日本語の文字だが、さっぱり意味をなしていないのだ。ページの端に「電気を使わない光で照らしてみてくださ...
先週最終回を迎えた短編「栞の木」は、某出版社のショートショートコンテストに応募し、優秀作(入選の下)になった作品です。入選作は出版社のwebサイトに掲載されますが優秀作は掲載されず、でも選評は...
6 しおり――本名栞ミキの親戚を名乗る女性にうながされるままに、私は荷物を持って外へ出た。「煙に当てられて」重くなった頭と体は、きりっとした夜の空気に当たると、少ししゃきっとした。 私...
5 栞の葉の切れ端をたっぷり放り込んだ木組みに点火すると、七色の炎が上がった。 浴衣を着た女たちがその周りで踊り、男たちは勇壮に和太鼓を叩いた。私はしおりの隣に座って、食べたり飲んだり...
4 どちらを向いても山が迫る、谷底の一本道に沿った細長い集落だった。 どの家も古い感じで、街並みは統一されている。でも、前に行ったことのある妻籠宿みたいに、観光地として整備されているわけではな...
3 翌朝、朝食を終えるとすぐに、また車で駅まで送ってもらった。他の泊り客は二、三組いるようだったけど、車に乗ったのは私一人だった。 温泉街なのだから、一泊で帰るとしても、もう少しのんびりするの...
2 半月ほどが過ぎて、いちだんと秋が深まった。 その日、学食のいつものテーブルに、しおりは現れなかった。初めてのことだ。 急用が入ったか、体調でも崩したか。まあそんなこともあるだろうと思って...
しおり〔しをり〕【枝折(り)/栞】 1 紙・布・革などで作り、書物の間に挟んで目印とするもの。 2 簡単な手引書。案内書。「修学旅行の―」 3 山道などで、木の枝などを折って道しるべ...
3 夕食を食べているうちに日は暮れ、鳥たちは一羽また一羽とねぐらへ帰っていった。 最後の一羽が「食器はバスケットに入れて勝手口の外に出しておいてください」と言い残して飛び立っていくと、静寂が訪...