【おそらの絵本】おはなしディスク「おやゆびひめ」が発売されました。こちらは、スマホとプロジェクター(別売り)を合体させて壁や天井に絵を写し、スライドショーのように読む絵本です。
「おやゆびひめ」は有名な童話ですが、白雪姫やシンデレラほどはなじみがなく、お仕事の話をいただいたとき、私は正直なところ「あれ?どんなお話だっけ?」という心境でした。皆さんはいかがでしょう。
ざっとあらすじ(兼感想文)をご紹介しますと…
子どもが欲しいと願う独り身の女性が、ある日、魔法使いから一粒の種を手に入れます。
女性がその種を育てると、花の中からおやゆびひめが生まれます。
おやゆびひめはあんまり可愛いからカエルにさらわれ…
でも、可愛いから蝶や魚に助けられ…
そして、可愛いからコガネムシにさらわれ…
それでも、可愛いからノネズミのおばあさんに助けられます。
おやゆびひめの可愛さパワーでどんどん物語が進んでいきます。
おやゆびひめは、いつも運命に身をゆだねるだけで、周りに流されっぱなしです。「可愛いからって、甘えてんじゃないよ!」と説教してやりたくなりますが、そこはぐっとこらえて読み進めると、ノネズミのおばあさんに内緒で、死にそうなツバメを一生懸命に看病します。
このツバメが元気になって、モグラと結婚させられそうになって悩んでいるおやゆびひめを助け、花の妖精の王子様のもとへ連れて行ってくれて、めでたしめでたし…という話です。
子どもの頃は運命は変えられないけれど、大人になったら自分の力で運命を切り開けるんだよ…というメッセージが込められているのかいないのか分かりませんが、「おやゆびひめ、さっきはごめん。」と、説教しそうになった自分を反省しました。
今回のお仕事で、我ながら気に入っている絵は、おやゆびひめが、ノネズミのおばあさんに、もぐらとの結婚を勧められる場面です。
金持ちで博学のもぐらの結婚式は、さぞ盛大だろうけど、どんな来賓が集まるのかな?花が嫌いなもぐらに配慮して、木の実のブーケかな?など考えながら描くのが楽しかったです。
ところで、私が最もショックだったのは…
王子様との結婚式で、おやゆびひめの背中に羽を付けてもらう場面なのですが…
ほとんどの絵本では省略されていますが、童話では「大きく白いハエのつばさ」と記されていたことと、さらに、花の妖精から、「おやゆびひめなんて変な名前よ、あなたはとても可愛いんだから、マイアと呼びましょう」と言われあっさり改名して、最後の最後にタイトルを否定するような展開を迎えることです。
なんじゃそりゃ~
「おそらの絵本」で津川聡子さんが絵を描いた1作目「おんがくれっしゃ しゅっぱつしんこう」についてはこちらを! 親子でプロジェクターで絵本を楽しんだ体験レポート的な回です。
「おそらの絵本」はこの小さなプロジェクターの形がまた可愛いのです。
第1作が出た頃よりも、ディスクのタイトルもこんなに増えました!
「おやゆびひめ」そして「おんがくれっしゃ しゅっぱつしんこう」も、引き続きよろしくお願いします!
津川聡子作「やっとこ!サトコ なう」「第38話 おそらの絵本「おやゆびひめ」発売記念特別篇」いかがでしたでしょうか。「意外と残酷」「意外と怖い」昔話や童話が多いのはよく知られるところですが、「ハエのつばさ」「タイトル全否定」とは、さすが目のつけどころが違います。可愛さですべて切り抜けるかと思いきや、自分で運命を切り開く……と思いきや!「実は意外とモヤモヤする」お話。
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