みなさま、こんにちは。
ホテル暴風雨、バー「霧氷」マスター、クラウディオです。
もうすぐマンネンジュのお茶とお酒の試飲会。ユメコさんに作ってもらった夢シロップを、これから会場のティーラウンジに持っていくところなのです。
こんにちは。ユメコです。私もお手伝いしますよ。
ユメコ:「ところでクラウディオさん、ティーラウンジのタモンさんはとても無口な方ですけれど、クラウディオさんは仲がいいですよね」
クラウディオ:「そうですね。私も最初は、物静かすぎて近寄りがたいと思っていたのですが、よく知り合ってみると、あれほど優しい人はいないですよ」
ユメコ:「おふたりで、どんなお話をするんですか?」
クラウディオ:「よく知り合ってもたくさん話すわけではなくて、話さなくても何を考えているかわかるような感じでしょうか」
ユメコ:「以心伝心ですね。タモンさん、すごく気配り上手な方ですもんね」
クラウディオ:「そうそう、接客の仕事をするのにあんなに無口で大丈夫かと思いましたが、お客様には大人気ですからね」
ユメコ:「お客様だけでなく、スタッフにも。タモンさん、実はいろいろな人と仲良しですよね。造園係のアルブルさんとか」
クラウディオ:「あのふたりは、小さいもの好きで気が合うんでしょうね。さて、ティーラウンジに着きましたよ。おや、厨房から話し声が聞こえます。あ、なんだかすごい笑い声まで……」
ユメコ:「あれは、シェフ・シムシムの声ではないでしょうか?」
クラウディオ:「そういえばタモンさん、シェフ・シムシムとも仲良しでしたね」
シムシム:「ワーッハッハッハッ!!タモンくん、きみは本当に面白いなあ。こんなに面白い人は他に見たことがないよ」
タモン:「…………………」
シムシム:「ハハハハハハ……ククククク……ギャハハハハハハ!!ひーっ、笑いすぎてお腹が痛い、もうやめてくれ〜」
クラウディオ:「……すごい会話を聞いてしまいましたね。いや、立ち聞きする気はなかったのですが」
ユメコ:「会話というか、なんというか……いったいタモンさんがどんな面白いことを言ってるんでしょうね……あれ、そこにいるのは、ジュロウシェフじゃないですか、何をされてるんですか、こんなところで?」
ジュロウ:「シィーーッ、静かに!いやね、シムシム先生が、試飲会がはじまるからタモンさんを手伝いに行くと言い出しまして。手伝いなんて言いつつ何か迷惑をかけるんじゃないかと気になって来てみれば、案の定ただ遊んでるだけですよ、まったく」
クラウディオ:「それで、なんと声をかけたものか考えていらしたんですか。シェフも案外、苦労性なんですねえ」
ジュロウ:「まったく、先生ときたら、人に優しく自分に優しく料理は美味しく弟子に厳しく、がモットーの方ですからね。下手に出て行くとよけいに大迷惑なことになりかねません」
ユメコ:「でも気になってこんなところで覗いているなんて、シムシム先生のことが大好きなんですね、うふふふふ」
クラウディオ:「それにしてもどんな話をしているのだか、タモンさんの声が全然聞こえないからわからないですね」
ジュロウ:「ものすごく怖いことを考えちゃったんですが」
ユメコ:「なんですか?」
ジュロウ:「タモンさんは何も言ってなくて、全部師匠の妄想と独り言だったりして……」
クラウディオ:「まさか!」
ジュロウ:「あり得なくはないな、あの人なら」
ユメコ:「……まさか、ねえ。それにしても、入っていきにくくなっちゃいましたね」
クラウディオ:「どうしましょうねえ」
ティーラウンジ「白夜」が登場する回はこちらです。タモンさんの寡黙な働きぶりをご覧ください!
バー「霧氷」が登場する回はこちらです。クラウディオさんの機転と大活躍をご覧ください!
ユメコさんの夢シロップについては前回のこちらをどうぞ!
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「ホテル暴風雨の日々」続きをお楽しみに!