命名狂時代

みなさまこんにちは。ホテル暴風雨、造園係のラウです。

同じく、アルブルです!

ラウ:「なんか最近、みなさんすごいですよね」

アルブル:「本当にね。お客様がたは遠慮されている感じもしますが、スタッフが」

ラウ:「もうじき新種豆の名前を発表するということになったら、さりげなく聞き出そうとしたり」

アルブル:「おすすめの名前をさりげなく刷り込もうとしたりね。いや、そんなにさりげなくもないんですけれど、これが。ラウさん、どんなのあった?」

ラウ:「この間、豆の試食会の相談に、ジュロウシェフのところに行ったんですよ。そしたら……」

ジュロウ:「空豆より大きくて、こんなに美味いんだから、宇宙豆っていうのはどうかね」

ラウ:「……と、おっしゃってました」

☆ ☆ ☆

アルブル:「ジュロウシェフらしい、ストレートで力強い名前ですねえ。巨大豆にはふさわしい名前だし。その逆というかなんというか、ツボミさんが庭に来た時にね」

ラウ:「えっ、ツボミさんが?」

ツボミ:「名は体を表すっていいますけれど、全然表してない名前もあって、その違和感も素敵だったりするじゃないですか。世界一小さい豆、なんて名前もいいんじゃないかなあ」

☆ ☆ ☆

アルブル:「……なんていうんですよ」

ラウ:「世界一小さいって、可愛くてアルブルさん好み過ぎますねえ」

アルブル:「うんうん、可愛い名前だよねえ!」

ラウ:「そうそう、仕事しながらつい歌を歌っていたら、ベルのメアオさんが来て」

メアオ:「ラウさん、やっぱりこの庭にはワルツが似合いますよね!この豆もほら、らせんを描きながら伸びて、ワルツを踊っているみたいです♪」

ラウ:「あっ、本当ですね♪」

メアオ:「ワルツにちなんだ名前がいいんじゃないですかね、華麗なる大円舞豆とか♪」

ラウ:「あはは、踊り出しそうな名前ですね」

メアオ:「美しく青き円舞豆とか♪」

☆ ☆ ☆

ラウ:「……な〜んて言ってましたよ」

アルブル:「さ、さりげなく青という文字を入れようとしているの!?それにしてもラウさんはよく歌いながら仕事してるね」

ラウ:「えへへへ、ばれてましたか」

アルブル:「メアオさんと二人で踊ってるところ、見たかったな」

ラウ:「二人じゃなくて、豆の木もですよ!」

アルブル:「そうだった!それにしても、みんな、こんなに豆の名前や命名に関心があったなんて」

ラウ:「美味しくて綿毛があってぶらんこもできて、みんな巨大豆が好きだからですかね」

アルブル:「そういえば、ひどいんだよ!バベルさんてさ、ひまな時によく庭に来るじゃない」

ラウ:「仲良しですよね、アルブルさんと」

アルブル:「まあ、そうなんだけどさ。最近ますます頻繁にやって来るんだよ。それで昨日も、そこの作業台で取り出した豆を数えていたら……」

バベル

アルブル:「12、13、14……」

バベル:「やあ、アルブルさん、壮観ですね!ひとつぶでも、ひとさやでも存在感のある豆がこんなにあると」

アルブル:「バベルさん、こんにちは!そうでしょう。今ね、数を数えて重さを測ろうと思ってましてね。15、16……」

バベル:「見事ですねえ、この綿毛。本当に羊毛にそっくりなんだな」

アルブル:「さやのハンモックがフカフカで寝心地がいいって、大評判ですよ。毛糸も採れますしね。17、19、20、21……」

バベル:「羊にちなんだ名前になるってもっぱらの噂ですけれどね、ちょっと一捻りするのはどうかと思うんですよ」

アルブル:「例えばどんなのですか?」

バベル:「ヤギに似たものの豆とか」

アルブル:「わかりにくすぎません?22、23、24、25……」

バベル:「眠れぬ夜に数える豆とか」

アルブル:「それはなかなか面白いですね。26、27、28と。さて、次に行こうかな」

アルブル:「これが今日29個目の豆ですよ」

バベル:「ほんとうに?確かに断言できますか?」

アルブル:「……そう言われると自信なくなってくるじゃないですか。喋りながら数えちゃったしなあ。よしもう1回。1、2、3、4、5……」

バベル:「今日は26日ですよね」

アルブル:「ああ、もうわからなくなるじゃないですか!もう一度数えよう。1、2、3、4……」

バベル:「ところでアルブルさん、今何時ですか?」

アルブル:「……ちょっとバベルさん、わざとやってるでしょ!『時そば』じゃないんだから、やめてくださいよ!!」

バベル:「あ、時計してたんだった。5時ですね」

アルブル:「6、7、8……」

バベル:「5を抜かしましたよ。自分で時そばの暗示にかかりましたね」

アルブル:「…………」

☆ ☆ ☆

ラウ:「あはははは、バベルさんって本当に面白い人ですよね!」

アルブル:「面白いのはいいんだけれどなあ」

ラウ:「もうすぐですね、発表するの」

アルブル:「そうだね」

というわけで、スタッフみんなが固唾を飲んで見守る中、新種豆の名前を近日発表いたします。みなさまもぜひ、お楽しみに!ラウと、アルブルでした。


新種の巨大豆にまつわるお話は、こちらをご覧ください。

ホテル暴風雨ではみなさまからのお便りをお待ちしております!

「ホテル暴風雨の日々」続きをお楽しみに!暴風雨ロゴ黒*背景白


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