はじまりの木

みなさまこんにちは。
ホテル暴風雨客室係、チヨです。

今日は総支配人経由でオーナーからの伝言が届きまして、なんでも「カメの話をしといて」だそうで。
前回のお休みから一週間、オーナーも本調子ではないのかもしれませんが、だからって「カメの話」って、なんという大雑把な!と、お思いになりませんかみなさま。

テンペスト:「チヨさん、斎藤雨梟オーナーは来年2018年、3月25日に、名古屋で行われる

カメ DE Show ! in 名古屋

という、カメグッズのお祭りのようなイベントに出展するのですよ」

チヨ:「カメグッズのお祭りですと?そりゃあ面白そうじゃありませんか」

テンペスト:「だからカメの話を、と言ったじゃありませんか、全然聞いてないんだから……」

チヨ:「なになに、「亀の家亀千代」という名前で、カワシマミワコさん、イケダミキさんと三人で出展すると!?亀の家亀千代とはね……なんだか色々言いたいことはありますが、カメのお祭だなんて素晴らしいですね」

テンペスト:「ありとあらゆるカメグッズが展示販売され、カメ作品以外展示禁止というストイックなイベントということですので、お近くのカメ好きの方、ぜひお越しくださいませ」

チヨ:「ほほう、私も行ってみようかしらん。さて、カメの話でしたっけ。まあ、私はカメですからね。どんな話をしてもいいってことでしょうかね」

テンペスト:「カメに興味を持ってもらえる面白いお話をお願いしますよ」

チヨ:「ではこんなのをお見せしましょうか」

はじまりの木 illustration by Ukyo SAITO ©斎藤雨梟

はじまりの木 illustration by Ukyo SAITO ©斎藤雨梟

テンペスト:「おお、クリスマスツリーのようです……が、豆だとかクラゲだとか、不思議なものがぶら下がっていますな」

チヨ:「以前やってみた期間限定デコレーションなんですよ。ちょうど冬至が近いので思い出しまして」

テンペスト:「クリスマスツリーではなく冬至ツリーというわけですか?」

チヨ:「いやいや、クリスマスも、そして新年も、実は冬至とは深い関わりがあるのです。今からお話ししましょう」


冬至というのは昼間が最も短く、以降はどんどん長くなる日、つまりは太陽がその勢いを復活させる日。死と復活、あらゆることの始まりと結びつけられるのが自然というべきでしょう。

クリスマスはイエス・キリスト生誕の日と言われていますが、12月25日とされるにあたっては、キリスト教が台頭してきた頃のローマで古く信仰を集めてきたライバル宗教が、冬至を神の復活祭として盛大に祝っていたのに対抗する意味があったとか。降誕祭・クリスマスがこの日に決まったのは、325年、第1回ニカイヤ公会議でのことだそうです。イエス・キリストが実際に生まれた日は、聖書の記述や天体現象などから推測するに、春頃とも秋頃とも諸説あるようですよ。ふ〜む、なかなか立派な若者でしたが、亡くなってもう二千年近いとは、そちらの方が感慨深いです。

そして、冬至は一部の神様の復活祭というだけでなく、太陽暦においては新年の始まる日とされる流儀が古来から多くあります。現在のグレゴリオ暦の新年・1月1日が冬至とずれているのは、ちょっとした大人の事情というようなもの。これにもニカイヤ公会議でのとある決定が関わっているらしく、暦と祭祀、宗教とは切っても切り離せない関係があるということですね。

人間界の事情はさておき、冬至をはじまりの日として祝いたくなる気持はわかります。というわけで、始まりの木、生命樹のようなものを意識してみたのがこちらの甲羅のデコレーションです。生命樹と進化の系統樹は何やら似ていますね。クリスマスツリーも。そう考えると、クリスマスツリーのてっぺんに星を飾るのも、すべてのはじまり、もしくは終わりを星や宇宙に関連づけているかのようで、面白いものがあります。

などなど冬至スペシャルデコレーションを回想してみましたが、実は私、年間を通して1日の長さがほとんど変わらない、熱帯の気候が一番好きなのですがね。


テンペスト:「なるほど、でも赤道直下以外では冬至はやはり特別な日、天文的にも意味のある特異な日ですからね。それに暦の上で、宗教や習慣の上で、あれこれ意味がついて派生したのが新年やクリスマスということですか」

チヨ:「ニッポンにお住いのみなさまは、起源を同じくする冬至、クリスマス、お正月、というイベントを三回も楽しまれるとはなにしろ愉快なことですね」

テンペスト:「特に信仰がないのにお祝いをするのに抵抗のある方もいらっしゃるようですが、繰り返し祝うという行為自体、そもそも関わりのないものを何かに見立て、なぞらえるのが本質とも言えますからね」

チヨ:「そうですそうです、ぜひ柑橘類を入れたお湯につかって茹だったり、赤い服のご老人をもてはやしたり、お湯につけた後の柑橘を乗せたお餅を食べたりして、新しいことの始まりを盛大にお楽しみください」

テンペスト:「あちこち盛大に間違ってますよ」

チヨ:「まあ細かいことは気にしないで。チヨの、カメの話でした」

テンペスト:「それもなんだか違ったような……」


今回は、愉快な長老たちがお送りいたしました。

ホテル暴風雨ではみなさまからのお便りをお待ちしております!

「ホテル暴風雨の日々」続きをお楽しみに!暴風雨ロゴ黒*背景白


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