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…………タモンです。
シムシム:「タモンくん、お茶をいただきにきましたぞ!おや、どうしたんだ、無口な君がひとりごととは珍しい。それに、チヨさんじゃないですか。ここで会うとは珍しい」
チヨ:「シェフ・シムシム、今日もまた、目の覚めるようなインパクトのファッションですねえ」
シムシム:「土星と宇宙をイメージしたのですよ。いや〜この服はよく褒められるなあ。昨夜は皆既月食でしたからね、こういうタイムリーなファッションはみんなに好まれるようですぞ」
チヨ:「…………ほどんど関係ないというかそういう問題じゃないというか、とにかくすごいですね」
シムシム:「そういえば、アルバートさんがもうすぐお帰りになるとか。さすがに副支配人を務める方がそうそうホテルを放って旅行をしているわけにはいけないのでしょうが、寂しい限り」
チヨ:「ご存知でしたか。私はどうも人間界の事情に疎いものでよく知りませんでしたが、ホテル・ユートピアとはどんなホテルなのですか」
シムシム:「いわゆる一流のホテルですよ、何度か泊まりましたが、料理もサービスもなかなかのもの」
チヨ:「ほほう、ちなみにシェフ、人間界のホテルに滞在されるときは、変装するのですか」
シムシム:「いえいえ、変装するのはここに来る時だけ、スタッフに気を遣わせたくないからですよ。よそのホテルに行く時は、人間界だろうが鳥類界だろうが普通のファッションですぞ」
チヨ:「普通……というのは今日みたいな」
シムシム:「いつも土星をイメージしてるわけじゃありませんよ、冥王星だったりヘラクレスオオカブトだったりフレミング左手の法則だったり……」
チヨ:「それを聞いてよくわかりましたよ。要はいつも通りなのですね」
シムシム:「人間以外立ち入り禁止とは書いていませんからね、たいていのところは普通にしていれば普通に入れます」
チヨ:「常軌を逸したものを見ると脳がそれに理由をつけるのを回避すべくそのまま受け入れる、人間の脳はそんな作用がことのほか強いとか」
シムシム:「とはいえさすがにユートピアは敷居が高そうでしたので、最初は人間に化けてみたのですが、どういうわけか余計に驚かれまして」
チヨ:「そんな作用もさすがに常軌を逸しすぎると効かなくなる、と。なんだか理由が想像できますね」
シムシム:「何をわけのわからないことをおっしゃっています。それより、アルバートさんの周りでは時間の歪みと思われる現象が頻発しているらしいですな。お帰りになったら向こうでは3日しか経っていなかった、ならいいものの、1000年経っていたりしたらことですな」
チヨ:「な、なんという不吉なことを」
シムシム:「ま、大丈夫ですよ。この間クラーラさんからも不思議な話を聞きましたが」
チヨ:「鍵の話ですか、そこまでご存知とは。一体何が起こっているやら」
シムシム:「鍵が増えるなんて吉兆に違いありません。アルバートさんはなかなか過酷な状況の中に帰って行かねばならないようですが、きっとうまく行くでしょう」
チヨ:「どういうことですか」
シムシム:「ホテル・ユートピアの内紛をご存知ない?」
チヨ:「ええ、全然知りませんねえ、人間界には疎いですから。アルバート様、お帰りになれば必ず争いに巻き込まれるということですか。どんな事情があるんでしょう」
シムシム:「話すと長くなりますがね、聞きますか?」
チヨ:「ここまできたらもう、聞かないわけには」
シムシム:「今日はティーラウンジも暇そうだねえ。タモンくんもこっちで一緒にどうかね」
タモン:「……………………次回に続きます」
明かされつつある謎めいた長期滞在者、アルバートさんの秘密!?
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