ゆめをみている

・・ゆめをみている

黄色なので菜の花畑と言いたくなるが
どこか見た目が違う気がする
黄色のカーペットを僕は見ている
(ぼくは、ゆめをみている)

足元からななめ左へ
それ以外にも数本くらいの道が
視界を埋めたカーペットを横切っている
(ぼくは、ゆめをみている)

右前方にはログハウス風の建物があって
ラーメン屋の看板を掲げている
看板には腕組みした大将の姿が
可愛げのあるイラストに描かれているが
同じようなイラストの店が不味かったことを僕は思い出す
(ぼくは、ゆめをみている)

この前に来たときはまだ
あの建物はケーキと焼き菓子の店だった
僕は好きだった
建物から少し離れたこの目の前に
通る者は持って行けということだろうか
やや日持ちしそうな菓子と
菓子屋店主からの告知がある
(ぼくは、ゆめをみている)

沖縄へ帰ります
と店主は告知で語っている
数本の道のうちで
僕の右側を通る一本はアスファルトだ
ここから車で沖縄へ行けるだろうかと
僕は想像する
(ぼくは、ゆめをみている)

二年ばかりこのあたりに住んでいるという気がする
仕事の命令で越してきたのだと思う
そう遠くないあたりに部屋を借りているはずだ
(ぼくは、ゆめをみている)

どこか遠くへ行こうと思えば
郷里でも別の土地でも
行けないわけではないだろう
どこへ行っても同じことさというのは冷笑的に過ぎる
違う土地には違う景色があり
違う苦労があるはずだ
(ぼくは、ゆめをみている)

たぶん僕は夢を見ている
ここは実在しない場所で
畑を埋めているのも架空の植物なのだと思う
なくなったなじみの菓子屋も
破綻してなお明るい店主も
もともとなかったものなのだろう
目を覚ませば
なくなったということ自体が
なかったことだと気付くのだろう
けれど
まだいまは
これからは菓子を買いに来られないと知らされて
少し途方にくれている
(ぼくは、ゆめをみている)


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