・・たぬき
白線が引いてあったらしいのだ
そこから先はあなたの国だから
しかるべき関所を
しかるべき手続きを踏んで
審査を通ったものだけが
入国できたらしいのだ
なのに僕と来たら
振り向くやいなや
大またでつかつか歩いてきたというのだ
足元には目もくれなかったとか
そんな人は初めてでしたと王様は笑う
あわてて言ってしまった ようこそ が
間違いのもとでしたと
そうかい 僕のほうは間違えてないよ
なにしろ一度も目をそらさなかったらしいからね
覚えちゃおらんが
あなたの国の王様はあなた
僕のあぐらに尻から上がりこんで
首をかしげて眠ってしまう
これがもてなしだろうかとつぶやくと
はい、と返事がかえってきて
なかなかのたぬきなのである