・・カーン
バットに叩かれたときでもなく
スタンドに飛び込むときでもなく
下降しはじめるあのときがホームランなのだ
見守られるなか
直線のまま彼方へ消えてゆくかと思われたそれが
不意に勢いを失い
カーブを描いて下りに差し掛かる
たとえ物理法則がどう言おうとも
着地点は
以前でもなく以後でもなく
白球がくだりはじめるあの瞬間に確定され
たどり着くべきひとつの座席が輝く
そのとき
すでに一秒前には耳に届いていたはずの音が聞こえる
カーンと音がする
詩人・中本速が、詩で遊ぶ連載です。たのしく!
・・カーン
バットに叩かれたときでもなく
スタンドに飛び込むときでもなく
下降しはじめるあのときがホームランなのだ
見守られるなか
直線のまま彼方へ消えてゆくかと思われたそれが
不意に勢いを失い
カーブを描いて下りに差し掛かる
たとえ物理法則がどう言おうとも
着地点は
以前でもなく以後でもなく
白球がくだりはじめるあの瞬間に確定され
たどり着くべきひとつの座席が輝く
そのとき
すでに一秒前には耳に届いていたはずの音が聞こえる
カーンと音がする