【その2からの続きです】
今回の国民投票の結果については様々な意見が述べられています。
たとえば若者は離脱に反対で年寄りは離脱に賛成、という趣旨をみかけます。しかし、この「若者」というのが曲者でして、例えば私の周りにいる大学生(社会人経験を経ていない純粋な学生)は、確かに反対している人が多かったですが、既に社会に出ている25歳前後の人は賛成派が多かったりします。
大学生はまだ社会の厳しさを知らず、現実を観ずに理想論で話している可能性があるわけです(それこそイギリス人大学生の友人の1人は、気軽にヨーロッパに旅行に行ける方がいいじゃんと、離脱に反対していました)。しかも、その反対している大学生も、ルーツを紐解けば元々は親が他国からの移民だったりするわけです。一概に、若者はオープンマインドで、懐古主義の年寄りが大英帝国再び!と主張していると考えてしまうのは危険だと思います。
更に興味深かったのが、離脱賛成に投じたという友人たちは皆揃って、自分の意見は周りには言わなかった、と言っていました。なぜなら、現在のイギリスで離脱に賛成すると表明することは、頭のおかしいレイシストだとレッテルを張られる危険性が高いからだそうです。
結果、イギリス人の中でも、自分たちの周りには離脱したいなんて言っている人はいなかったのになんでこんな結果になったんだ!、という事態になっているようです。隠れキリシタンではないですが、若年の労働者の中に結構な比率で離脱に賛成している人が多いのではないかと想像します。
一方、スコットランドはその選挙区のほとんどがEU残留を支持していました。様々な理由が絡んでいますが、その大きな理由の一つに移民者がスコットランドまではなかなかやってこないということがあるようです。
つまり、スコットランドはイングランドほど移民による被害を受けていないので、離脱に賛成する理由が無いわけです。また、スコットランド人はスコットランドに対するアイデンティティーが強烈です。これを機にスコットランドを英連邦から独立させようという意見が高まっています。現在の首相もスコットランドの独立の急先鋒の人のようでして、スコットランドの旗とEUの旗を左右に据えて24日に会見している姿は印象的でした。
この先どうなるのか、誰も何もわからない状況です。
この二年でイギリスはEUと交渉をして離脱することになりますが、キャメロン首相が退任することになりましたので、誰が(あるいはどの政党が)交渉役に就くのかすらわかりません。世界経済についても、結局イギリスがEUと自由貿易協定を結ぶので、あまり影響はないという意見がある一方、離脱派の人たちは、その自由貿易協定を改めて結び直す代わりに、政府が移民の条件をかなり緩めた法律を作る(実質今回の離脱の際に求めていたことが無意味なものになる)可能性があるとも懸念しています。
先述した通り、スコットランドが改めて英連邦から独立してEUに入るという話もあれば、フランスなどがイギリスと同じくEUからの離脱を図る可能性もあります。
個人的には、そもそもこんな世界的にも大切なことを、国際社会からは遠い国民に決めさせていいのかとも思う一方、本来プロであるはずの政治家が現在の混乱を招いてしまっているようにも思います。
いずれにせよ、賽は投げられました。イギリス人は国内の状況を立て直すために、ハイリスクハイリターンの賭けに出ました。イギリスがEUに残留することによる痛みを共有しない我々は、部外者にすぎません。我々は右往左往せず、イギリス人が打って出た賭けを見守るしかないのだと思います。
(2枚の写真の引用元は Daily mail online )
★2002号室「3万分の1日を」でシャルル大熊さんもこの話題に触れています。
理想が現実に負けた日。イギリスのEU離脱国民投票(Brexit)
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