足利直義:なるほど……
しかし、というかそもそもの話なのですが、仏教だけでもたくさんの宗派があって、それぞれに違う修行方法をとっていて、師匠たちの言うこともマチマチということになると、初心者はいったいどれを正しいと信じて入門したらよいのでしょうか?
先に悟りを得られるのなら正邪の見分けがつくと思うのですが……
夢窓国師:うむ、確かに世も末になってくるとインチキ宗教の勢力が増してくるというのが常じゃ。正しく修行を積んだことがない人が迷うのも無理はない。
これが相撲とか競馬、囲碁や双六の類であれば、予め明確にルールが定められているので、チョンボやイカサマを判断・指摘することは簡単じゃ。
また、土地の境界トラブルとか罪の軽重などに関する難しいケースであっても、最高裁までいけば必ず決着がつく。
しかし、仏教にはそういったものはないので、ある人が「これこそが真実への道だ!」と言い出したところで他の人に否定されればそれまでじゃ。
世間一般の裁判とも性質が異なるので、必ず決着をつけてくれる機関もない。
「教祖の言葉を正しく受け継いでいる!」と主張したところで、言葉なんぞは伝言ゲームでいくらでも変わってしまうものなので証拠にならない。
「著名な師匠にもらった証明書がある!」と言い張るヤツもおるが、もらった経緯を確認する方法がないからそれも怪しい。
なのに世間のアホどもは妄想を逞しくして、特定の宗派を選んで一方的に信じ込む。
そして、そうなったが最後、それ以外の宗派は全部ニセモノだと言い張って耳に触れるのもイヤだというのじゃが、これこそはアホ中のアホじゃ。
逆に、宗派や理論がたくさんあり過ぎて自分で選ぶことができず、茫然と波間を漂うばかりといった感じのアホもおるな。
こういったヤツらは皆、「教外別伝」というものを信じることができておらんのじゃ。

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