足利直義:あのですね…… 今までの問答を書きとめておいたら、結構な分量になったのですが、これ、出版していいですかね?
で、もしOKならばもうひとつご提案したいのですが、従来のような漢文ではなく、かな交じり文で書こうと思うのですけれども。そうすれば世間一般の人々、特に女性たちなどにも読んでもらえるでしょうし。
夢窓国師:禅の真骨頂は臨機応変な対応ぶりにこそ、あるのであって、あらかじめ用意したりテキスト化したりすることはできない。
……とこれまで口を酸っぱくして言ってきたつもりなんじゃが、オマエはいったい何をきいておったのじゃ(苦笑)。
テキストの裏の裏を読んで真意を悟るのですら次善の策だというのに、オマエに対する方便で話しただけの内容をテキスト化して他人に読ませてどうしようというのか!
……とか言って、ワシの師匠たちは軒並み文字に頼ることを禁止してきた経緯もあるしな。
一旦、文字にしてしまうと、どうしても教条主義的に考える輩が出てしまって、かえって悟りが遠くなってしまうんじゃよ。
でもまぁ、そんなマボロシみたいな内容の本など、なければないで誰も気にもせずに過ぎていってしまうけど、出版されれば読んだ人たちの間に「あれは素晴らしい!」とか「あれはクソみたいな内容でダメダメ!」などといった「機」を生じることができるよなぁ。
それに考えてみれば、昔の師匠たちの見識に偏りがなかったのは、仏教典ははもちろんのこと、様々な教えのテキストを幅広く読みまくった上で禅にたどり着いたからじゃ。
ただ形だけの座禅をして妄想を膨らましておるヤツが世間に溢れておる…… という批判が起こるような状況なのであれば、絶対誤解されることは覚悟の上で出版するというのも悪くないのかも知れんのう。
これまで良かれと思って口頭で大勢の人たちに説法をしてきたが、全員に真意が伝わっておるかといえば甚だ怪しいもんじゃし。
なんか不本意だけど、こんな寝言みたいな問答(=夢中問答)でも、順逆の縁を結ぶきっかけにはなるかもな。
いいじゃろう。好きにするがよかろう!

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★別訳【夢中問答集】(中)新発売!(全3巻を予定)
エピソードごとにフルカラーの挿絵(AIイラスト)が入っています。
上巻:第1問~第23問までを収録。
中巻:第24問~第60問までを収録。
別訳【碧巌録】シリーズ完結!
「宗門第一の書」と称される禅宗の語録・公案集である「碧巌録」の世界を直接体験できるよう平易な現代語を使い大胆に構成を組み替えた初心者必読の超訳版がついに完結!
全100話。公案集はナゾナゾ集ですので、どこから読んでもOKです!
★ペーパーバック版『別訳【碧巌録】(全3巻)』




