ショー・ウィンドウと季節のうつろい

前回は、蝉の声に彼らの「夏へのレスポンス」を聴くというお話でした。
自分の居場所をメスに知らせるために鳴く、蝉のオス。まだ少しその叫びは続きそうです。
残暑とひとことでは片付けられない蝉の営みが、そこにありますね。

そうは言うものの、ヒトの消費社会ではもう秋が始まっています。
街のショー・ウィンドウは、すでに秋冬の色に。表情のないマネキンが、ふわふわのダウンや毛糸の帽子で懸命に季節をアピールしています。
ウィンドウに透けて映る自分はまだ半袖に短パンですが、マネキンは黙ってスッと立ちながら「そこのあなた、その格好はもうお・わ・り」とサインを送ってきます。
しかも商品も売り込みながら。

ショー・ウィンドウ 池袋2

僕が東京暮らしを始めたのは1986年。その秋には「ここは、ショー・ウィンドウから季節が変わるんだなあ」と思ったものです。
田舎の青森では、春も秋も夏も冬も山から降りてきます。
童謡の「春が来た」(1910年)では、その様子が「山に来た 里に来た 野にも来た」と歌われていますね。

都会では、マネキンが季節を知らせてくれる。
今は慣れてしまったことですが、それは田舎者のちょっとした“発見”でした。
そのウィンドウに映る自分をそれらしく演出することが、自分のショーなんだなあとも。

ちなみにその頃のふだん着は、無地の白Tシャツに、ワンウオッシュのジーンズ、そしてスニーカーでした。
シンプルで気に入っていましたが、今から思えば吉田栄作的な格好だったかと。
あ、すみません。自分の体躯は全く別物でした。

ショー・ウィンドウ 池袋1

先日、池袋の街で僕にコールしてくるマネキンがいました。
「おい、そろそろ寒くなるよ。大丈夫?」と。
彼らは、ダウンジャケットをしっかり着ていました。
僕は、「今からそんなに着込まなくても大丈夫!ヒートテックもあるし」とレスポンス。
背中にしばらく彼らの視線を感じつつ、ウィンドウを離れました。

街でウィンドウ・ショッピングしている人たちは、どんなコール&レスポンスをしているのでしょうね。
そのやりとりを、こっそり聴いてみたいとは思いませんか。

コール&レスポンス!