ご先祖さまとのコールとレスポンス 1

 みなさんは、自分のご先祖さまとお話ししたことはありますか? 僕の故郷の青森県津軽地方には、何年かに一度、自分たちの先祖の霊に話を聴く「仏おろし」という儀礼がありました。今回は、そのお話をしたいと思います。

 中学1年のある夏の夕刻のことでした。僕が学校から帰ると、親も親戚のおじさんやおばさんも勢揃いしていました。総勢20人ほど。仏壇のある奥の部屋で正座して、何かが始まるのを静かに待っていました。仏壇の正面には、ひとりの女性が座っていました。その人は、近所に住む目の少し不自由なおばさんで、僕の家にも冠婚葬祭のたびにお手伝いに来てくれていた人でした。僕は長男だということで、その人のすぐ後ろに座らされました。 

「へば、始めますか」

 そう言って、その人は手に数珠をかけて経を唱え始めました。般若心経か何かだったと思います。ジャラジャラという数珠の音とその人の声をじっと聞きながら、僕たちは待ちました。5分ほどすると、その人の体が前後に小さく揺れ出しました。声は大きくなり、仏間いっぱいにお経が響き渡ります。と、次の瞬間、その人の動きが止まりました。そして、大きく一つ深呼吸をしました。そして、喉の奥から絞り出すような声でこう語り出したのです。

「生きでる時には、世話に、なった……」

 ご先祖さまが降りてきた瞬間でした。おじさんおばさんたちは、身を乗り出してその声を聴いています。じっと、じっと、静かに声を待っています。おばさん、いやご先祖さまは、久しぶりにやってきたぞという感じで何やら満足気です。これから始まるコールとレスポンスに、中学生の僕はもうドキドキ。それが、僕にとって文化の面白さを考える第一歩となりました。

 どんなお話が出たのかって? それは次回、お話ししましょう。世界がコールとレスポンスで出来ているということを、まずはお知らせしておきますね。

コール & レスポンス!