このコーナーでも以前にふれた話題だが、僕は10年ほど前から授業で時々ギターを弾いて歌っている。おもにブルース詞を作るワークショップ形式の授業の時だが、学生たちから実にさまざまなブルースな気持ちが吐露され、それは興味深いひとときになる。
今期は少し冒険をし、ラップで授業のまとめ(らしきもの)をやってみた。いつも学期の最初には、「出来ればBGMでトラックをずっと流して、それに乗せて授業をやってみたいんだよねえ」と呟いてみる。だが、なかなかそうした機会も作りにくい。でも今期の明治学院大学の「社会参加実習」という科目で、やりたかったことをやってみた。
明治学院大学白金キャンパスの「お気に入りスポットを動画で紹介する」という課題に学生たちが取り組んだことが、そのきっかけになった。「社会参加実習」はいわゆるまちづくり系の科目だが、授業時間が限られているため、郊外へと学生を連れ出し、コミュニティの動態を摑む余裕がない。そこで僕は、キャンパスや教室をひとつのコミュニティと見立て、そこに集まったところから始まる人間関係やちょっとした共同作業(プロジェクト)の面白さを実感してもらえるよう授業を組んできた。キャンパスを動画で紹介するという課題も、そのひとつだ。
そんな課題に取り組む中、あるグループが大学の中庭のベンチで歓談している男子学生らの様子を撮ってきた。そこには、楽しくラップでおしゃべり、やりとりする姿があった。その動画を授業で紹介した際、
“社会参加実習、2016のこの課題、いいネって言える作品が出てきて嬉しいネ、yeah”
と少しだけノって言ってみた。すると、意外にも学生たち(特に男子学生ら)もノってきたのだ。きちんと韻を踏めばラップになるのだが、そこは素人の即興だから仕方がない。
とにかくそれではということで、<課題をやってみてのコメントをBGMにのせてマイクで語ってもらうというコーナー>ということで、ゆっくりマイクを回していった。
驚いたのは、ふだんはおとなしく座っていた男子学生が、マイクを手に堂々とラップすることだった。
「オレは学生番号XXXXXXの○○、
今日紹介したスポットは、パレットゾーン(ラウンジのようなスペース)。
ひまな時間もスポッとはまる、
色とりどりの学生があつまる、
雪の日はホワイトだったパレットゾーン」
ビートと言葉で、こちらのカラダも揺れてくる。前回紹介したラッパーのGASHIMAのようにはいかないけれど、「まず表現してみる」というステップは大きく越えたと思う。新学期が楽しみになってきた。
コール&レスポンスで、明けましておめでとうございます!