観察の午後

みなさまこんにちは。

造園係のアルブルです。

今日は、仕事がひまだとやってくるあの人が、朝から来ていますよ。
バベル

司書兼コンシェルジュのバベルです。

アルブル:「あーあ、確かに、謎の箱が出現したかと思うと、やっと正体を現しての大騒動、面白かったですけれどねえ。そこで高見の見物なんて、ちょっと意地悪ではないですか」

バベル:「観察と言ってくださいよ。見て、そして見られる。観測そのものによって事実は生まれるのです」

アルブル:「すぐ難しそうなことを言ってごまかすんだから……でもその双眼鏡、オペラ鑑賞の貴族みたいでかっこいいですねえ」

バベル:「いいでしょう、古いオペラグラスなんですよ。芸術鑑賞も一種の観察です。観察は貴族的な趣味と言えましょう」

アルブル:「それで、観察した結果新しい知見は得られましたか?」

バベル:「いやはや、シェフ・シムシム、あの方は天才ですよ、大騒動の!」

アルブル:「なんだか微妙な才能ですけれど、料理の才能に加えてもう一つ天賦の才をお持ちとはさすがですねえ」

バベル:「微妙なんてものじゃありません、絶妙としか言いようのないタイミングですよ。メアカくんが私たちに箱があることを知らせにきた後、結局メジロくんに見つかって他のベルスタッフたちを呼びに行きましたよね」

アルブル:「そうでしたね。豆を運ぶのを手伝うだとかで」

バベル:「メアオくんは呼ばれて素直に仕事に戻りましたが、メグロくんは諦めきれず箱の観察続行、メギくんは穴を掘って隠れようとして穴に落ちて気絶していました」

アルブル:「ふむ、ベルボーイたちがすぐ気絶するのは知ってるけど、掘った穴に落ちるって……」

バベル:「メグロくんが箱をつつこうとしたらしく、その辺で木の枝を拾う。箱の近くに戻る際に足を滑らせ転倒、木の枝をメギくんの穴に落とす」

アルブル:「おやおや……」

バベル:「木の枝が落ちてきてメギくん、気がつく。何とか穴から出る。メグロくんも起き上がる。まさにその時ですよ、あの邪悪なプレゼントが転がり出したのは!何という機微!!」

アルブル:「……思ったんですが、大騒動の天才はむしろベルボーイたちではないでしょうかね」

バベル:「なるほど、そういう考え方もありますね。私だって観察しながらも誰かに観察されているかもしれません。その種の発想の転換ですね」

アルブル:「バベルさんを観察ねえ。そんなひまな人他にいるでしょうか。今、近くには誰もいないみたいですよ」

バベル:「隠れているのかもしれないし、猫丸様のような宇宙人ならば千里眼かもしれない、ジュロウシェフのような視力100.0超の持ち主が見ているかもしれない」

アルブル:「視力100.0 ですって!?さっぱり意味がわかりませんが」

バベル:「視力検査のランドルト環、あの大きなC型の切れ目の位置が、500メートル先からでもわかるという意味ですよ」

アルブル:「す、すごいですねえ」

バベル:「そしてアルバート様の様子がちょっと変ですね。一体何が起こるのか、次回も観察あるのみですよ」

そうですね、確かにそれは気になります。さて、仕事仕事。バベルさん、まだここで観察ですか?まあいいや、何か面白いことがあったら教えてくださいね。みなさまにもご報告しますので。

アルブルでした。


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