絵本塾出版 尾下千秋社長第3回

尾下千秋社長インタビュー第3回です。図書館物流の専門家だった尾下社長が、なぜ絵本を書き始めたか、さらに自ら出版社を立ち上げるに至ったか、その理由をお聞きします。


子どもたちの「生きるヒント」になるようなものを作りたい。

2009年に絵本塾出版を設立されます。設立の動機をうかがえるでしょうか?

「きっかけは二つですね。2003年にTRC(図書館流通センター)の社長を降りて関連会社の社長になり、TRCの社長のときよりは時間の余裕ができたこと。もう一つは2004年頃に長崎県で小学生が同級生を殺害するという事件があったことです。
ぼくはこれに大変な衝撃を受けたんです。何かが狂ってきていると思いましたね。親とも学校ともまともなつながりを持てずに生きている子どもたちがいるんだと。

自分にも何かできないか。そう思っていたら、あるとき頭の中にふん水が吹き上がるようにアイデアがあふれだしてきました。
キャラクターが浮かびストーリーが走りだしました。朝方4時ごろ飛び起きて、夢中で原稿を書くようなことが何度もありました。

絵本「にじになったさかな」ビーゲンセン・作 永井郁子・絵

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そんなふうにして書き上げた第1作が『にじになったさかな』(絵・永井郁子 汐文社)です。子どもたちの生きるヒントになるようなものを作りたい、という強い願いがあったんです。だから初期の作品はどれも勧善懲悪、教訓的なテーマのものでした」

ビーゲンセンというのはふしぎなペンネームですね?

「出版業界と図書館界に知人が多いから、コネで出したと思われるのが嫌でペンネームにしました。つけ方は単純ですよ。尾下千秋を音読みにしただけ」

秋がありませんが?

「出版することは商売。商売イコール商いでしょ。商いイコール秋ない(笑)。
そんなことより、出したらどういうことが起きたかといいますと、『にじになったさかな』は鳥取県の読書感想文コンクールと読書感想画コンクールの課題図書に選ばれました。
そして小学2年生の子が書いた感想文が第1位の県知事賞を取り、また同じ小学校の2年生が描いた感想画が教育長賞を受賞したんです。

ネットでそれを知り、感想文を読んでみると本当に素晴らしい感想文で、よくここまで深く読み込んでくれたと感激しました。

それでですよ、絵本塾出版作ったのは。それまでは止むに止まれぬ思いで絵本を作り始めたものの自信はなかった。この子どもたちの受賞のおかげで続けていけるかもしれないと思い、自分で出版社を立ち上げることにしたんです」

TRCと絵本塾出版、大きな会社と小さな会社の経営はだいぶ違うものでしょうか?

「同じですよ。簡単にいえば、大きな会社は小さな会社がいっぱい集まっているようなもので、セクションのメンバーを掌握する段階が多くなっているだけです。ビジネスの基本はまったく同じだから、一つの会社が大きく成長しても、本来はそのままやっていけるはずなんです」

尾下千秋社長インタビュー、23日(月)更新の第4回では、ゼロから絵本出版社を作っていくことについて、そしてこれからの目標についてうかがいます。どうぞお楽しみに!


尾下千秋(おしたちあき)
岐阜県生まれ。永年図書館用の物流構築に携わった。在任中、子会社の出版部門を担当。その一方で、絵本用の物語を書き始め、「にじになったさかな」「ヨウカイとむらまつり」「どうぶつのおんがえし」「パパにあいたい」などを出版した。
子供たちにも受け入れられると感じ、退職して出版社を立ち上げて現在に至る。以降の作品に
「なんのいろ/なんのおと/なんのかたち/なんのにおい/みつけよう」の五感シリーズなどがある。絵本作家としての名はビーゲンセン。一般向けの著作に「変わる出版流通と図書館」がある。


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