岩崎書店 岩崎弘明社長第2回

今月の社長インタビューは岩崎書店の岩崎弘明社長です。53歳で初めて出版界に身を投じた岩崎社長が、当時危機的状況にあった岩崎書店の経営再建を果たしたかげには、異業種からの参入ゆえの大胆な発想がありました。


経験がないからこそできることがある。
岩崎書店 岩崎弘明社長

岩崎弘明社長

岩崎書店社長に就任した経緯を教えてください。

「53歳のときでした。当時81歳だった日本の母から電話があって、岩崎書店の経営状態が良くないこと、立て直すために母自身が職場復帰するという話を聞きました。私はこれを何か遠いことのように感じて、ただ「がんばってね」と言ったきりでした。

しかし、3か月後、母は突然亡くなってしまったんです。葬儀のために帰国して、私は母の遺した日記を読みました。そこで初めて、父を亡くしてから母がさみしくしていたこと、夫婦で苦労して築いた出版社が傾き、それを自分の責任のように感じていたことを知りました。

すぐに、母のためにこの会社を立て直そうと決心しました。二人の兄は大学教師でまるで経営には向かないので、私は家族をロスに残し、単身赴任することにしました」

出版業の経験がないことに不安はありませんでしたか?

「不安があったとしても、やるしかないわけでしょう? それに経験がないことは、悪いことばかりではありません。先入観なく考えられるからです。

私は旧態依然とした出版業界の流通システムから手をつけ、仕入れ価格の見直し、他社に先駆けての中国での印刷など、インフラの整備に力を入れました。
肝心の出版物においては、海外経験を生かして、翻訳ものを充実させました。宇宙物理学者スティーヴン・ホーキング博士の『スペースアドベンチャー』シリーズもそのひとつです」

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「私自身が野球少年であまり本を読まなかった経験から、誰も手をつけていない「本好きでない子どもたちを対象にした本」を考えました。人間の身体を図解する本に本物の聴診器をつけたセットは50万部くらい売れました。子どものころお医者さんが使っているのを見て「ぼくも聴いてみたいなあ」と思ったことがあった、それをヒントにしたのです。
男の子が好きな冒険小説に、モンスターのカードをつけたシリーズもヒットしました。

出版のみやってきた人たちからは何と奇抜な企画と思われただろうけれど、幸い再建は軌道に乗り、過去最高の売り上げを記録するまでになりました。
母が亡くなってから17年が経っていました」

次回はアメリカ生活20年以上の岩崎社長に日本とアメリカの比較についてうかがいます。18日(月)の更新をどうぞお楽しみに!


岩崎弘明(いわさきひろあき)
1940年神奈川県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。
父岩崎徹太は岩崎書店創業者、母治子は同社編集長。しかし読書少年ではなく野球少年として成長する。若き日から広い世界に憧れをいだき、初め日産自動車駐在員として、のち永住移民者としてアメリカ暮しを実現する。1993年帰国し、1995年岩崎書店代表取締役社長に就任。現在会長と社長を兼任する。(本インタビューでは社長と表記させていただきます)
岩崎書店ホームページ


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