第187話 実家の押し入れレポート ピアノ篇

実家の、私が子供の頃に使っていた部屋は、現在は母の寝室になっていて、押し入れの中は当時の私の物がまだ残っています。

今回は、ピアノを習っていた頃の思い出の品々をご紹介します。

こちらは発表会のプログラム表です。

5歳からピアノを習って初めての発表会では「かっこう鳥の歌」(作曲 ポップ)、その翌年に「エリーゼのために」(作曲 ベートーヴェン)、中学3年生の最後の発表会で「幻想即興曲」(作曲 ショパン)を弾いたのは覚えていたのですが、その他はいつ頃何を弾いたのか殆ど忘れていました。

プログラム表のおかげで、こんな曲を弾いていたことが分かりました。

小4 ドナウ川のさざ波(作曲 イバノビッチ)

小5 夢のおはなし エチュード・アレグロ(作曲 中田喜直)

小6 ソナタ ハ長調(作曲 モーツァルト)

中1 ゴリウォーグのケークウォーク(作曲 ドビュッシー)

中2 花の歌(作曲 ランゲ) ・ 連弾 セレナーデ(作曲 シューベルト)

覚えていない曲ばかりなので、新鮮な気持ちでこれからまた弾いてみようと思います。

発表会のために母が縫ってくれた衣装も残っていました。

ピンクのドレスは七五三だったかな?私が生地を選んだことや、母がビーズで刺繍をしている姿を覚えています。

ピアノと一緒にソルフェージュという音楽の勉強もしていました。

名前の後に小さなマークを描くのが流行ってたのかな?★♡

聴音(先生がピアノで弾いたメロディや和音を楽譜にする)は大好きでした。

ピアノの先生に、「歌を習って、歌うように表情豊かに演奏できるようになりましょう」と勧められて、声楽教室にも通いました。

歌謡曲を歌うのは大好きでしたが、声楽教室では口を縦に思いっきり開けて仁王立ちでオペラみたいに歌わなければならず、恥ずかしいし、顎も外れるし、声楽教室は大嫌いでした。今でも、「コンコーネ」「コールユーブンゲン」と聞くと少し憂鬱な気持ちになります。

同じく先生に勧められて、中学生の夏休みに、音楽大学の夏期合宿にも参加しました。

たしか、コンクールの課題曲を上手に弾けるようにという目的でした。

こんなリストも残っていました。

当時の私には、「立派な賞状をいただきありがたい」と思う気持ちは微塵もなく、「参加者の大半がもらえるこんな賞ではなく、最優秀賞を貰わなければ喜べない」と思っていました。

だいぶ前に、子供の頃のピアノレッスンを漫画にしているので、よろしければご覧ください。

子供の頃は、クラスで一番は世界で一番と同じことでした。自分は世界で一番、ピアノが上手いと思い込んでいた頃のお話です。
ピアノ演奏に定規は使わないのに、なぜか昭和のピアノの先生は定規を持っていることが少なくなかった気がします。学校の先生はチョークを飛ばしたり、昭和という時代は、文房具が武器としても使われた時代でした。
大先生の風貌、お宅、ピアノの響き…あれはどこまでが現実でどこからが白昼夢だったのか?四半世紀以上たった今となっては確める術はありません。ただ、あの日いただいたありがたい言葉は、はっきりと覚えています。
「悔しくないのか?」「悔しいです!」「俺はお前たちを殴る!」先生と生徒が泣きじゃくりながらそんな会話を交わすドラマが流行った時代、サトコとピアノの先生はというと…
力を抜くことは、力を入れることより難しいし、力を抜くことを教えるのはもっと難しい。それをサトコに教えてくれた神原先生の神業はいかに!?
自分にはピアノしかない…そのピアノも先生の言う通りにしなければモノにならない…そんな危機感に襲われつつピアノ道を進むサトコがぶち当たった壁は…!?
音大に入るためにピアノを休んで受験勉強をすることに矛盾を感じることもなく勉強をがんばっているつもりのサトコ、その成果は…?
音大に行くにはピアノを休んで受験勉強をしろ!志望校に入るには学校を休んで塾へ行け!言われるがまま実践したサトコはどうなったかというと…?
前向きな正論が受け入れられない…サトコのちょうどそんな時期は「夕焼けニャンニャン」全盛期でした。

中学3年で受験をきっかけにピアノを弾かなくなってからは、みるみる腕が衰えて、頑張っていた当時を振り返るのがなんとなく後ろめたい時期が続きました。

でも、去年からピアノ漫画家と名乗り始めて、当時の自分はこのために一生懸命ピアノを弾いていたのかなと思えるようになりました。

やっと、穏やかな気持ちで思い返せるようになった気がします。

(津川聡子 作)


*編集後記*   by ホテル暴風雨オーナー雨こと 斎藤雨梟

津川聡子作「やっとこ!サトコ なう」「第187話 実家の押し入れレポート ピアノ篇」人に歴史あり、のお宝画像てんこ盛り回でした、いかがでしたでしょうか。子どもの頃など、親の持ち物や祖父母宅の物置から古めかしいものが出てくると、「歴史って、本や博物館の中以外にもあるんだな」なんて不思議な気持ちになったものですが、サトコさんも私も、そしてあなたにも歴史あり! 今も日々、歴史を作って生きているのですね。バックナンバーのピアノ道も、お母さんの縫ってくれたドレスのように素敵です。サトコさんの「なう」につながる色とりどりの積み重ね、ぜひ読んでみてください!

「やっとこ! サトコ なう」へのご感想・作者へのメッセージは、こちらからどしどしお待ちしております。次回もどうぞお楽しみに♪

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