別訳【夢中問答集】第八十二問 大乗仏教の修行は難し過ぎる? 2/3話

円覚経には、「一切の仏や世界は皆、急に眼を動かした時に現れる空中のチラつきのようなものだ」と書かれておる。

大乗の修行というものは、たとえ一生の間に悟りを開くことができなくても来世が今よりも悪くなることはない。決してムダにはならないものじゃ。

百歩譲って前世の業が深すぎて現世の修行が充分ではなかったとしても、大乗の修行に取り組む気持ちさえ失わなければ、どれほど悲惨な環境に陥ってもやがて解脱の時が訪れるハズじゃ。

先ほど話した龍女(竜宮城に住む海の大王である沙羯羅(サーガラ)龍王の娘)が、畜生道に堕ちていたにも関わらず八歳の時点で成仏することができたという話が、そのいい証拠じゃ。

マガダ国のアジャセ(阿闍世)王は父親殺しの重罪を犯したが、ブッダの教えに帰依することで救われた。

ブッダはアジャセ王に対して次のように語ったという。

「遠い過去、ビバシ仏がこの世を治めていた時に、オマエと私は同時に大乗修行の誓いを立てた。
ただ、オマエは生来の怠け者であったので、今に至るまで修行が完成せずにいたのだ。
だが、大乗修行の誓いは忘れていなかったために、その後もずっと国王や大臣など有力者の家に生まれ続けた。
そして遂に父親殺しまでしてしまったわけだが、今、私に会ったことで悟りを得たのだ」

「十万本の仏塔を立てるよりも、大乗の悪口を言って地獄に落ちる方がマシだ。それは例えば地面につまづいて転び、その地面に手をついて起き上がるようなものだ」、ともお経には書かれておる。

つまり、大乗を知ったがために悪口を言うことになって地獄に落ちたとしても、既に大乗に触れているので時期さえ来たら解脱できる、ということじゃ。

悪口を言ってすらそうなのじゃ。集中できないまでも大乗修行に取り組もうとしている者が解脱できないわけがなかろう。


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