別訳【夢中問答集】第三十五問 根源的な智慧と後知恵 2/3話

そのようなヤツは言うなれば「夜明け前」のようなもので、自分自身の悟りは確かに完成しているのじゃが、それを人さまの役に立てることができないので、傍から見ていてなんだかよくわからないままじゃ。

「わかっちゃいるが、教えられない」というヤツじゃな。

逆に過去事例を研究して人を教え導く手法に長じても、悟りそのものがフワフワしたものだったとしたら、これはこれでやはり役に立たない。

「教えられるが、わかっちゃいない」というヤツじゃ。

かつてワシの先輩はこう言ったよ。

「わからんのだったらテクニカルなことは全部ほうっておいて、ただひたすらに本質を理解しようとしなさい。わかったのだったら、もう本質のことはいいからテクニックの研究をしなさい」、とな。

「本質」とはなにか? それは代々受け継がれてきた「仏教の神髄」のことじゃ。

「仏教の神髄」とは何か? それは全ての人間が生まれつき持っているもののことじゃ。

教導テクニックは手段であるので宗派によって千差万別じゃが、「本質」はたったひとつしかない根本じゃ。

繰り返すがテクニックは枝葉に過ぎない。だから初心者は変に形から入ろうとするのではなく、まっすぐに「本質」を理解しようとすべきなのじゃ。

「本質」を理解してからさらに三十年、五十年と研究を深めることを「長年の工夫」という。
「長年の工夫」の完成形こそが、いわゆる「打成一片(だじょういっぺん)」なのじゃ。

もし本当にこの境地に至ることができたなら、人を教え導くことなどわざわざテクニックを弄するまでもなく自然に、かつ流れるようにできることじゃろう。

「本質も教え方もわかっている」というヤツじゃ。

残念ながらそんな人物はなかなかおらず、「本質も教え方もわかっちゃいない」連中ばかりが世にあふれておるがな・・・



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