皆さんは、ほかの動物とどんな交流をしていますか？ ペットを飼っているひとならば、「おーはーよっ」、「こっちおいで、ほーらほら」など、日本語でも話しかけていることでしょう。そして可愛いペットは、その言葉を理解してくれる。微笑ましいやりとりですよね。
僕は中学・高校時代、夜になると自宅の窓を開け、ときどき吠えていました。
実家は、夏は蛙の合唱がにぎやかで、秋には黄金色の稲穂が実る田んぼの広がる津軽平野の中にありました。
「ワン、ワン！ ワオーッ、オン、オン！」
ひと吠えすると、それを聞いて隣りの家の犬が「ワン、ワン！」と返事をします。それがまた数軒先に伝わり、わずか１、２分のうちに、自宅から半径１kmのエリアに暮らしている犬たちの声が、集落の中に響き渡ります。
何をしているのか。それは、声でお互いの存在を確認しているのです。人間の僕は、そう思って吠えていました。
「おーい、みんな元気か？ 晩ご飯は食べたか？ 散歩はもうすませたか？」
「おう！ いまさっき、小一時間歩いてきたよ。」
「あ、今ちょうど夕食中〜」
「今日はもう眠いんだわ〜」
鳴き声から、実にいろいろな思いが伝わってきます。一匹一匹の姿を確かめて歩いたことはありません。でも、声が遠くまで届いて、それに応じた個性ある声が返ってくる夜の時間、僕は不思議な開放感と連帯感を味わっていました。
1986年の3月下旬、高校を卒業して東京へと向かう前の日、僕は“お別れ吠え”をしました。
「いってくるぞ！ みんな、元気で！」
「おお、行ってこいや。元気でな！」
いつもの何匹かが、そう言って送り出してくれました。あれから30年。いま東京で暮らしている僕は、街で犬を見かけると「ワン」と吠えそうになります。
「生きてるのか？」
「生きてるワン！」
そんなやりとりをしたくて。
コール ＆ レスポンス！