コール&レスポンスとウラ打ち

大学時代に所属していた音楽サークル。音楽サークルゆえに、リズムにはウルサい人が多かった。お酒を回し合うコール&レスポンスの際にも、ウラ打ち(オフ・ビート)が入った。そのウラ打ち感覚が身につけば音楽愛好者として一人前だという文化が、当時の僕のサークル内にはあった。

「それって結局はリズム感の有る無しの話なんじゃないの?」
そう言われれば、そうかもしれない。でも僕は、♪あなたと呼べば~ あなたと答える♪のコール&レスポンス文化から、いろんなことを吸収した。そのひとつは、いわゆる日本社会に生きる上で、ウラ打ちを意識することの大切さ。なんだか大げさな物言いだが……。

皆さんは、「私の青空」という榎本健一(エノケン)が歌った曲を知っているだろうか。原曲は、Gene Austinという米国の歌手のMy Blue Heaven(1927)という作品だ。ジャズアレンジで、リズムにはウラ打ちが入っている。

https://www.youtube.com/watch?v=5w-_xbBmXJ4&list=RD5w-_xbBmXJ4

これをエノケンは、跳ねたリズムで明るく朗らかに、♪狭いながらも楽しい我が家~♪と歌った。聴いていると、こちらも幸せな気持ちになる。しかし、当時の聴衆の手拍子のリズムを聞いてみると、しっかりオモテだ。

1968年(昭和43年)のテレビ番組で、エノケンが周囲のリクエストに応えて「私の青空」を歌う動画が残っている。それをみると、ウラでリズムを取っていたスタジオの皆が、ほどなくオモテ打ちで揉み手のリズムになっていく様がわかる。司会の坂本九も、嬉しそうにオモテ打ちで歌っている。途中、歌いながらエノケンはウラを強調するのだが、それが周りのオモテにかき消される。なんとも哀しい、切ないシーンだ。

https://www.youtube.com/watch?v=39GV1gDY4ag

僕は、「聴く」ということを軸としたコミュニケーションのワークショップを、大学の講義や企業の研修、そのほかいろいろな講座で実施している。その際によくブルースを歌う。理由は、ブルースがウラ打ちを含む跳ねたリズム(シャッフルと言う)を主要素とした音楽だから。相手の音を「聴く」ワークを行なう場合、オフ・ビートがしっかり出ている音楽やその部分が強調されたリズムを流したほうが、聴いて(関係づくり) ー 合わせて(共感共同の実践) ー 絡む(リズムでセッション・やりとり)というプロセスがより有意義なものになりやすい。

同じ音を同じ瞬間に出すのは易い。しかし、相手の音に絡み、お互いにリズムを創り出すのは、ひと手間かかる。それは、相手の音を「聴く」という手間だ。相手の音が聴こえなくなったら、もう一度耳を澄まし、再び合わせ、絡んでいけばいい。こうした一連の聴く力を鍛えるのが、僕がやっているコール&レスポンスの交流ワークショップだ。

エノケンや九ちゃんがゼスチャーでウラを強調できていたら、そして周りの皆がもう少し聴く耳があれば、「私の青空音頭」とは違うものになっていただろうか。いや、日本における「音頭」の身体化は深いので、結局は同じ模様になっていたのではないか。皆さんはどう思いますか?

コール&レスポンス!


*おまけ* おすすめ! むらなが吟 バージョンの「私の青空」
https://www.youtube.com/watch?v=7gVroh5cIW8