この部屋のおしゃべりは、いきなり「ご先祖さまとのコールとレスポンス」の話から始めてしまいましたが、もともとコールとレスポンス、Call & Responseは、音楽演奏の世界で使われている言葉です。ご存知の方も多いですよね。まずは皆さんも知っている歌を挙げながら、コールとレスポンスの話をしましょう。
昭和10年のヒット曲「ふたりは若い」(詞・サトウハチロー 曲・古賀政男)は、♪あなたと呼べば あなたと答える♪ で始まります。あ、少し古い例ですかね(笑)。この歌の中、ディック・ミネと星玲子の間では、呼びかけと応答が続けられています。英語では「ねえダーリン」「なんだいベイビー」というやりとりに相当するものですね。昭和10年、1935年の段階で、昭和歌謡に明るくコールとレスポンスが盛り込まれていたわけです。
ところでコールとレスポンスは、米国の綿花畑で共同作業をする中、リーダーの声に続いてほかの作業員らが同じフレーズや応答の声を返すワークソングという形式が、そのルーツのひとつと言われています。俗に「掛け合い」といわれる形式です。故・忌野清志郎が「イエーイ!」と叫べば、フロアが「イエーイ!」と答えたアレのことです。ジャンルは異なりますが、東京Jazz2008の時に、ジャズピアニストのチック・コリアが名曲「スペイン」の後半で、楽団のトーンを落としピアノとフロアだけで掛け合いをやりました。あれも、コール&レスポンスでした。フロアを巻き込んでのコール&レスポンスとは、さすがにチック・コリア!と感激したものです。
チック:たらーらーらッ
フロア:ららーらーらっ
チック:んたたたーたたたーーたーーたっ
フロア:んらららーらららーーらーーらっ
満員の観客がホール全体でする掛け合いは、とっても気持ちのいいものでした。この声と声、声と楽器、楽器と楽器などで受け答えする表現の形式を広くコール&レスポンスと言うことができます。自分で歌った詞や感情を、抱えたギターでベンベンと受けるBluesミュージックにも、このコール&レスポンスが盛り込まれています。ミュージシャンは独りでやっていますので、モノローグかもしれませんが、「自分(の感情)との対峙・対話」という意味では“ひとりコール&レスポンス”です。僕も時々、ギターを鳴らしながら歌いますが、よく歌うのは、このBluesです。Bluesにはコールとレスポンスがたっぷり含まれています。このコール&レスポンスを、世の中のいろんなところに見られる表現形式と考えれば、かなりの現象やモノの関係が理解しやすくなるのではないでしょうか。
コール&レスポンス!