はじめまして、お名前は?

このお話は絵とお話「伝説の羊の木」

ホテル暴風雨の庭園に、新種かもしれない謎の草が生えてきました。バベルさんの見立てでは「バロメッツ」に似ているとか。それ、なんでしょう?そして呼ばれていったメエサクさんが発見したものは!?
マンガ「何が見えますか?」
ホテル暴風雨の庭園に芽生えた謎の新種?それとも伝説の羊の木!?は思いがけない成長を見せ、依然謎に包まれています。そこへ、運動神経抜群のバー「霧氷」のマスター、クラウディオさんが登場!
の続きです。先にこちらをお読みになるとよりお楽しみいただけます。

では、はじまります!

みなさまこんにちは。
ホテル暴風雨、造園係のアルブルです。

いや〜、びっくりしましたよね、あの木には。突然生えてきたと思ったらあっという間に成長してしまって。

結局花や実などは見つからなかったのですが、あの後、クラウディオさんにもう一度登って、葉や蔓、茎の様子などを写真を撮ってきてもらったんです。葉っぱなんかは、手の届く低いところのものと同じでしたが、高いところから見た海の写真が何といってもきれいでしたね。まさに楽園のようで、空を飛べるみなさんはいつもあんな景色を見ているなんて、羨ましい限りです。

さて、以前チヨさんにあの木の葉を渡して調べてもらったので、今日はその結果を聞きに行くんです。チヨさんの研究室って、机だの何だのがチヨさん仕様に低めに作られていて、ちょっとミニチュアみたいで可愛いんですよね。楽しみだなあ。

「こんにちは!」

チヨ:「おや、アルブルさんかね。お入りなさい」

アルブル:「チヨさんこんにちは。あの木、ますます育っているようなんですよ。もう先端は見えないくらいなのではっきりとはわかりませんが。みんなマンネンジュの花芽みたいだって言ってます」

チヨ:「マンネンジュの花芽はあれだけ高いのに、触ったり、近くを飛んだりするだけで折れそうになるというから調べるのも一苦労だが、こっちは登れるし近寄れるしでだいぶ調べがいがありそうだね」

アルブル:「そうですね。みんなはああ言ってますが、総支配人のお話では、マンネンジュの花芽ほどは高くないとか」

チヨ:「アルブルさんや、それより大変なことがわかったんだ。これを見なさい。なんと、あの木の遺伝子をよく調べた結果、間違いなく新種で、現生の地球生物の中では、ヒツジに最も近い遺伝子を持っていると!」

アルブル:「チヨさんまでそんな冗談言って……それに何ですか、その怪しげな図は。『ヒツジ』『羊』って字が書いてあるのは、まさかシミュラクラ効果的なものを誘おうとしてわざわざ!?」

チヨ:「あーあ、もうばれてしまったか。いやいやさすが安直なものには惑わされない、科学的な態度は素晴らしいね」

アルブル:「恐縮です……って、それで惑わされる人いますかね?」

チヨ:「まあまあ、でもね、新種には違いないようだよ。まあ、あんな巨大で成長の速い植物は『ジャックと豆の木』くらいしか見たことがないから予想はしていたが。造園係の二人で最初に見つけたんだったね?相談して、好きな名前をつけたらいいよ」

アルブル:「ええっ!?本当ですか?ドキドキしてきたなあ。こういう時、どういう名前をつけるんでしょう」

チヨ:「地名とか自分の名前とか好きなものの名前を入れるとか、まあ、何でもいいでしょう」

アルブル:「ふ〜む。でも、せっかくだからこの植物の特徴を名前にしたい気もします。もうちょっと、花が咲くとか実がなるとか、生態がわかってからみんなにも相談して決めたいんですが」

チヨ:「それはいいね」

アルブル:「あれ?でももっとよく考えたら、今まで見たことのないはじめてのものでしょう?そういう時って、まず名前をつけるんじゃなくて、お名前は?って聞くべきなんじゃないでしょうかね」

チヨ:「それはそうだが、会話ができなかったらやむを得ないし、名前なんてしょせん、呼ぶ方の都合だからねえ」

アルブル:「新種ってことは、会話ができるかどうかもわからないわけですよね。まだ羊の実がならないとも限らないし。もう少し、待ってみましょうか」

チヨ:「そ、それがいいだろうね……ふむ、真面目なアルブルさんまでこんなことを言い出すとは、面白くなってきたぞ……」

アルブル:「あれ、今何かおっしゃいました?」

チヨ:「いやいや、何でもないよ。じゃあ、またしばらく観察してみるとしようか」

アルブル:「はい!」

というわけで、新種ですよ、新種!ワクワクしますねえ。早くみんなに報告したいなあ。

みなさまもホテル暴風雨においでの際は、ぜひこの巨大な木をご覧くださいね。アルブルでした。


ホテル暴風雨ではみなさまからのお便りをお待ちしております!

「ホテル暴風雨の日々」続きをお楽しみに!暴風雨ロゴ黒*背景白


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