怪鳥五十面相

みなさまこんにちは。ベルボーイのメギです。
この間は、総支配人直々の指示なのをいいことにツリーハウスにばかり夢中になっていて、キャプテンにこってりと叱られてしまいました。

でもやっぱり、樹上客室ができたら、鳥類のお客様、樹上生活者のお客様はもちろん、眺めのいいところがお好きな方や、泊まらなくてもいいから登ったり中で遊んでみたいというお客様に大好評だと思うので、早く実現しないかなあと思っています。

あ、こうしてはいられません、お客様がいらっしゃいました。

「予約はしていないんだが、部屋はありますかな」

「ぎゃー!出た〜!!お化け!!!…………と思ったらシェフ・シムシムではないですか。い、いらっしゃいませ、お久しぶりでございます」

あ、しまった、シェフ・シムシムの変装には気づかないふりをするのがお約束だったのに、忘れていました。どうしましょう。

シムシム:「メ、メギくん、なぜ私だとわかったんだね」

メギ:「それはその、何といいますか、変……じゃなくて、ふつうじゃないオーラが、にょろにょろ踊り出て……いえ、じわじわ滲み出ていたもので」

シムシム:「大したものだなあ。きみには無毒のきのこを見つける才能があるという噂だが、他にもいろいろありそうだ。でも、他の人には私が来ていることはくれぐれも内緒にね」

メギ:「はい。でもよくそんな話をご存知で。メグロくんが推理してはくれましたが、私に本当にそんな才能があるのかまだわからないというのに」

シムシム:「ハッハッハッ、私の鼻は地獄鼻だよ。ジュロウくんが巨大豆を料理していることだってお見通しだ!」

メギ:「鼻……!?」

シムシム:「メギくん、きみの好きな歴史上の鳥類は誰かね?」

メギ:「えーと、えーと、やっぱり『みにくいアヒルの子』でしょうか」

シムシム:「なるほどねえ。あの話は人間界の作り話だったという説が支配的な時代もあったが、近頃の研究ではアヒルに育てられた白鳥の実話というのが定説になりつつあるね」

メギ:「はい。孤独な子供時代の後、自分が白鳥だとわかるくだりは泣けてしまいます。シェフは誰がお好きなんですか」

シムシム:「私はやはり、怪鳥五十面相だね。五十の顔を自在に操り、地球外生命を相手に頭脳戦を繰り広げて友好関係を結び、ついには地球外の技術を取り入れて、空域に、地上生活者の目には決して見えないバード・サンクチュアリー・ネットワークを築くきっかけとなった偉大な鳥だからね」

メギ:「そうですよねえ、かっこいいですよね、怪鳥五十面相」

シムシム:「私も五十くらいの顔が欲しいが無理ではないかと昔は諦めていたんだ。だが、五十くらい簡単だったんだ!メギくんや、才能というのは、ひとつじゃない。誰の中にもたくさんあって、その組み合わせが大切なんだよ」

メギ:「そりゃあ、シェフならばそれくらいおありでしょうねえ」

シムシム:「ある時は変装名人」

メギ:「えっ、それはひとつにまとめちゃうんですか」

シムシム:「ある時はごま塩の伝道者。ある時は白ごまを愛する者。ある時は黒ごまを愛する者。またある時は塩田で作られた海の塩を愛し、ある時は山深い食塩泉の塩を、そしてまたある時は……」

メギ:「あの、シェフ、大変よくわかりました。でも、伝説のシェフというのは数に入ってないんですか」

シムシム:「そんなことは小さな問題だ。要は、きみの中にもだな、まだ何に育つかわからない才能の素がたくさんあるのだよ!」

メギ:「そうでしょうか。そう言っていただくとちょっと自信が出てきます」

シムシム:「ところで、私は巨大な豆がなっているところを見て、ツリーハウスで豆を食べたり遊んだりしたいと思ってここまできたんだよ。ぜひ案内してくれたまえ」

メギ:「ああ、なんだかまたキャプテンに叱られる予感が……」

シムシム:「どうした、何か不都合でも?」

メギ:「いえ、何でもありません。すぐにご案内いたします」

シェフ・シムシムの到着で、近頃巨大豆で盛り上がっていたホテルが、また一段と賑やかに……というか、ひと騒動起きそうでドキドキします。メギでした。


変装大好き、でもいつもばれている!?ホテル暴風雨・前総料理長にしてジュロウシェフの師匠、シムシムさんの初登場回はこちらです。

ホテル暴風雨に、またまた怪しいお客さんがやってきたようです。おかしな変装をしてホテルの料理についてあちこちで聞いて回っている様子ですが、一体全体、何者なのでしょうか?

他にもシェフ・シムシムはいろいろなところに登場しています。

ホテル暴風雨ではみなさまからのお便りをお待ちしております!

「ホテル暴風雨の日々」続きをお楽しみに!暴風雨ロゴ黒*背景白


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