日本でベンチャービジネスという言葉ができたのは1970年ごろだそうです。今月の社長インタビューは、正にそのころから日本経済におけるベンチャーの重要性に注目し、研究と実務に携わってきた、ノスクマード インスティチュートの柳野隆生社長にお話をうかがっています。
総合的でなければならない
ノスクマード インスティチュートのお仕事について教えてください。
「基本コンセプトは一貫してベンチャーの開発と育成支援です。
ただ若い企業だけが我々の顧客ではありません。創業100年に近い会社もあります。
ベンチャーの発想はベンチャー企業だけに必要なものではないんです。
大手でも中堅でも、行き詰まったときは新たな展開を考えなきゃいけないでしょう? 未知の領域にチャレンジするならそれは全てベンチャー。だから企業再生、再建もたくさんやっています。
新展開を必要とする企業を、最初から最後までサポートする。スライスした1領域だけ専門的にサポートする会社が多いけれど、我々はそうではない。資金繰りから知財法、株式公開、場合によってはクロージングまですべて相談に乗ります。
過去にとらわれていたら未来が開けない。飛躍の原点をどう持つか。そこを社外から、広い視野で提案します」
「そのために絶対的に必要なことは、総合的であること。専門バカじゃダメなんですよ。
わたしは弁理士だから知的財産の法律がベースにあるけれども、それはせいぜい2、3割です。工学論、技術論、マーケティング論、経営論、財務論、あるいは経営哲学。全部ひっくるめた全体性の視点であらゆる企業のサポートをしています。
我々は小さな組織だけれど、つきあう人たち、つきあう企業がそれぞれ次の方向を見出すお手伝いをすることによって、彼らが本来の力を発揮できるようになる、そういう形で間接的ではあるが社会の一翼を支えている自負があります」
総合的であることを意識されたのはいつごろからでしょう?
「それはもう18歳のころからですね。だから大学で文学、法学、経済学、工学、有機化学をも勉強しましたよ。文学は仏文。スタンダール。
仏文なんて社会に出たら役に立たないと人は言います。でも違う。今ビジネスにとても役に立っています。スタンダールが書いているのは美学です。美学を持って生きるというのがどういうことか。では企業経営の美学とは何か?
大事なのはね、スタンダールの書いた美学が良いか悪いかではないんです。自分はどんな美学を持つか、ということが問われている。それにどう答えるか。今わたしはビジネスの世界で答えているつもりです」
柳野隆生社長インタビュー、次回更新は20日(月)です。どうぞお楽しみに!
柳野隆生(やなぎのたかお)弁理士 研究開発&事業開発コンサルタント
1943年、和歌山市生まれ。
1975年、知的財産の視点からベンチャービジネスの事業開発、商品開発を支援する特許事務所を開設し、多くの企業を世に送り出すと共にその成長を支援、平成に入ってからはプロジェクトファイナンス、人材育成、事業提携やM&Aを手掛ける株式会社ノスクマード インスティチュートを設立し現在に至る。
ノスクマード インスティチュートHP