尾下千秋社長インタビュー最終回は、子どものころのこと、学生時代のことをうかがいます。本好きで作家志望だった尾下青年は社会に出て何十年も働いてからその夢をかなえることになります。まさに人生は筋書きのないドラマというべきでしょうか。
夢を見ることが一番大事。
子どものころのお話を聞かせてください。ご出身はどちらですか?
「出身は岐阜です。ぼくは、それこそ小説になりそうな家庭環境だったんだよね。両親は再婚同士で、しかもそれぞれに子どもがいました。全員は会ったことはないですがね。
親父の実家はそれなりに財産のある家だったらしいんだけど、親父は大酒飲みで婿入りした家の山も蔵の中のお宝もぜんぶ売っちゃって飲んでしまった。だから中学生のころは貧乏で、将来は絶対社長になってやると思ったものです。
本が大好きでね、小学4年生のときは図書館で講談社の世界名作全集を読み漁ってた。背が黒い46判のシリーズで『黒いチューリップ』とか『三銃士』『佐久間象山』『渡辺崋山』とかです。5、6年生で推理小説にはまって、中学に入ると筑摩の日本文学全集を読み始めました。
中学2年のときの担任が岡本先生。東大出たばかりの若い先生で、起承転結とか序論・本論・結論などの文章の基礎を徹底的に教えてくれました。
もともと好きな世界だから先生の話がすうっと入ってきたなあ。それで作家志望になって、高校のときはいろいろ書いていました」
「東京に来たのは大学に入ったとき。東京に行けば作家になれると思っていました。東京に出て修行すればとかじゃなくて、境界線越えたらですよ(笑)。
だからすぐに銀座へ下駄履いて行ったんだよ。作家気取りで。今思うとありえないけど、そういうもんだと思ってた(笑)。
結局作家にはなれず、ひとさまの本売る側になっちゃったんだけどね。
それから何十年も経ち、たまたま社長降りてちょっとひまになって、同時に世の中ちょっとおかしいと感じるようになった。それからですよ。また書き始めたのは」
社長になる、作家になる。どちらの夢も実現されたわけですね!
最後に「座右の銘」をうかがえるでしょうか?
「『天はあざむかない』しかないね。
努力するヤツは必ず報われる、がぼくの信条なんですよ。夢を見るってことが一番大事。そのために目標を立て、着実に努力していけば必ず道は開けます。大丈夫です」
勇気の出るお言葉です。
最後の最後、恒例の質問です。お好きなホテルを教えてください。
「TRC(図書館流通センター)の営業時代に日本の代表的都市や町にいきました。いろんなホテルに泊まりました。印象がいいホテルは鹿児島市の『城山観光ホテル』ですね。そこのサウナでTRCの同僚に偶然あったことがあります。温泉つかりながら桜島を眺めるのは最高です。縁起のいいホテルです。
もう一つは横浜市の『ロイヤルパークホテル』です。あるクーポンを使って泊まった際、空いていますからどうぞと一番大きいスイートルームを追加料金なしで泊まらせてくれました。それからずーっと愛用しています。中華街に近いし、みなとみらいにも近く、とてもいい場所で、感じのいいホテルです」
尾下社長、長時間ありがとうございました!
尾下千秋(おしたちあき)
岐阜県生まれ。永年図書館用の物流構築に携わった。在任中、子会社の出版部門を担当。その一方で、絵本用の物語を書き始め、「にじになったさかな」「ヨウカイとむらまつり」「どうぶつのおんがえし」「パパにあいたい」などを出版した。
子供たちにも受け入れられると感じ、退職して出版社を立ち上げて現在に至る。以降の作品に
「なんのいろ/なんのおと/なんのかたち/なんのにおい/みつけよう」の五感シリーズなどがある。絵本作家としての名はビーゲンセン。一般向けの著作に「変わる出版流通と図書館」がある。