第162話 漫画「Alborada del gracioso 道化師の朝の歌」ネタバレ解説

なんと!アックス第160号(青林工藝舎より9月5日発売)に、私の漫画「Alborada del gracioso  道化師の朝の歌」が載りました。そこで今回も嬉し恥ずかし自分でネタバレ解説をお届けします。

私は、タイトルもアーティスト名も意識せずに、ただ「良い曲だな」と思いながら音楽を聞くことがよくあります。家に遊びに来た友達に、流している音楽を、「これ良いね、なんていう曲?」と聞かれても、自分なりの曲のイメージしかなく、ちゃんとした情報が全くなくて何も答えられないことが多いです。

長い間、曲名を調べずに、

「この曲を聴くと、いつもワクワクするな。何か良いことありそうな気持ちになる。朝、こんな曲で目覚めたら良い一日が過ごせそう。陽気で、楽しくて、なんか可笑しい、ピエロみたいなイメージの曲だな。」

と思いながら聞いていた曲がありました。

ある日、その曲名が「道化師の朝の歌」と知り、イメージ通りでびっくりしました。それ以来、「一番好きなクラッシック曲は?」という質問には、モーリス・ラヴェル「道化師の朝の歌」と答えるようになりました。

漫画「Nocturne Op.9 No.2」がアックスに載って以来、ピアノ漫画家(命名:斎藤雨梟さん)を名乗りはじめた私は、次は「道化師の朝の歌」を漫画にすることにしました。

まず、道化師のキャラクターを考えました。

色々と描いているうちに、もっと簡単に描ける、ピアノの妖精のような道化師にしたいと考えて、こんなキャラクターを思いつきました。

全て音楽記号で出来てます。

リパの名前の由来は、ディヌ・リパッティという、私が中学生の時にレコードをジャケ買いして以来、大好きなピアニストの名前からいただきました。

ちなみに八ちゃんに道化師のキャラクターが決まらないと相談した時、リパッティの写真を見ながらこんな絵を描いてくれました。

曲の途中、フラメンコのようなリズムの部分があります。ラヴェルのお母さんがスペイン人ということもあり、この他にもラヴェルの作品にはスペインの要素が感じられる曲が多数あります。

リパの魔法で、ピアノの上の置物が変身します。

赤べこが闘牛に…

人形がフラメンコダンサーに…

女の子の部屋も……

これは、実際に私が家でピアノを弾く時に考えていることを表現しました。ピアノが居間にあるので、弾くときはいつも家族に迷惑がられるのですが、「ここはコンサートホール。沢山の人達が私の演奏を楽しみにしている。」と想像して、緊張感を味わいながら人気ピアニストになった気分で弾いてます。

「道化師の朝の歌」はとても難しい曲で、私は全く弾けませんが、女の子が弾く場面はリアルに描きたかったので、スヴァトスラフ・リヒテルが弾く動画を見ながら描きました。

私の漫画は分かりにくいとよく言われますが、ラヴェル作「道化師の朝の歌」を聞いて読んでいただけると、もしかしたら、何かしら感じていただけるかもしれません。

Dinu Lipatti – Ravel – Alborada del gracioso

Richter plays Ravel Alborada del gracioso

アックス第160号は安部慎一特集で、幻の漫画作品と言われている「籠の鳥」や、個人誌に書かれたエッセイが掲載されている貴重な一冊です。ぜひお読みいただけると幸いです。どうぞよろしくお願いします。

(津川聡子 作)


*編集後記*   by ホテル暴風雨オーナー雨こと 斎藤雨梟

津川聡子作「やっとこ!サトコ なう」「第162話 漫画「Alborada del gracioso 道化師の朝の歌」ネタバレ解説」いかがでしたでしょうか。
音符の妖精、かわいいですね♪ どうも、「ピアノ漫画家」命名者の斎藤雨梟です! 津川聡子さんの作品には、時々掲載される特別編をご覧の方はご存知、「言葉のない漫画」がありますが、アックスに掲載されたのもその系統! まるで音がないのに心の中に音楽が響いてくるサイレント映画のよう。前号の「アックス159号」に掲載された漫画のネタバレ解説も是非ご覧ください。

20年ぶりにアックスに漫画が載りました!もう嬉しすぎて、自分で作品解説しちゃいます。最新号アックス159号、どうぞよろしくお願いします。

「やっとこ! サトコ なう」へのご感想・作者へのメッセージは、こちらからどしどしお待ちしております。次回もどうぞお楽しみに♪

ホテル暴風雨にはたくさんの連載があります。小説・エッセイ・詩・映画評など。ぜひ一度ご覧ください。<連載のご案内>