<赤ワシ探偵シリーズ番外編>山猫夜想曲◆第十五話「ジャックの思い」
ジャックはジョーに向き直り、まっすぐに見つめた。 「なんで帰りたくないか、わかりませんか? ぼくは保管庫なんですよ。そして、ボスのスペアの身体でもあります。ボスが死んだ時にはボスの意識は...
ジャックはジョーに向き直り、まっすぐに見つめた。 「なんで帰りたくないか、わかりませんか? ぼくは保管庫なんですよ。そして、ボスのスペアの身体でもあります。ボスが死んだ時にはボスの意識は...
ジャックの言葉を聞いた途端、ジョーの目が釣り上がり、眉間にシワがよった。 この当時はやたらに気が短かったジョーは、ジャックの首根っこをつかみ、ナマコ面の目の穴から顔を覗き込んで凄んだ。 「帰り...
間違いない、この猫人はジャックだ。 そうジョーが確信した瞬間、相手は思いがけない行動に出た。 背中のカゴを下ろすと、中身ごとジョーに向かって投げつけたのだ。 「うわっぷ!」 ...
ジョーは、磁天に作ってもらったニセモノのナマコ面を被った。岩で作ったものだが、水の中で浮力が働いているため、それほど重さを感じなかった。 目と鼻の位置に小さな穴が空いているが、外から見ると表面のゴツ...
「この世の終わりみたいな顔をしているな」 殺される、というジョーの訴えを聞いても、磁天は真剣に受け止めていないようだった。むしろ、面白がっている様子だ。それを見て、ジョーの頭にカッと血がのぼった...
「ん? オレを知っているのか?」 山猫の精悍な顔に、意外そうな表情が浮かんだ。それを見て、ジョーは思い直した。 「そんなはずはねえか。いや、実はここへ来る前に聞いた話を思い出してい...
生暖かい微風が肌にまとわりつく。 見渡す限り、赤紫の地面のうねりが広がっている。遠くの丘の稜線の上は、暗い青緑色の空だ。 地面に押し当てている手の肉球に何かが触れた感じがした。ジョーは手をどか...
ジョーに選択肢はなかった。 あらためて両手を見ると、心なしかクラゲ化が進行しているように見える。ジョーは決心した。顔を上げ、ボスとシマジをまっすぐに見た。 「行くしかねえようだな」 ...
宙に浮かんだ水の塊は、ひと抱えほどの大きさになると成長をとめた。 中心から湧き出していた水流は、しばらくは激しい勢いでぐるぐる回っていたが、やがて静かになり、水の塊は分厚いレンズのような形に...
部屋を出たジョーは、茶トラに先導されて暗い廊下を進み、階段を上がった。 並んだ扉の一つを茶トラがノックすると、中からくぐもった返事が聞こえた。 茶トラが扉を開けてうやうやしく礼をした。 「ボ...