
<赤ワシ探偵シリーズ3>ノルアモイ 第三話「テレパシー」by 芳納珪
「本当か!」 話を聞いてやると言った途端、占いねずみのグレコは目を輝かせた。それから、やけにしんみりした、遠くを見る目つきになった。 「俺、俺はよう……ロスコに拾われなけりゃ、死ぬ...
「本当か!」 話を聞いてやると言った途端、占いねずみのグレコは目を輝かせた。それから、やけにしんみりした、遠くを見る目つきになった。 「俺、俺はよう……ロスコに拾われなけりゃ、死ぬ...
ちょうどそのとき、おかみさんが私の火星坦々麺を運んできた。 空腹が最高潮に達していた私は、グレコと名乗った占いねずみのことはそっちのけで、反射的に箸をとって坦々麺を食べはじめた。 縮れ麺に...
「やってるかね」 私は「月世界中華そば」の暖簾をよけ、引戸を開けて声をかけた。黄味餡みたいなおかみさんが、巨体をゆすりながら奥から出てきた。 「あら赤ワシのだんな、いらっしゃい。今...
月明かりの晩。 立体都市トキ市を縦横に走る無数の歩廊のうちのひとつ。その端の溝に、小さな黒い影がうごめいていた。 ちょろちょろっと進んでは立ち止まり、ゆらゆらと左右に揺れる。しばらくするとまた...
好評発売中・イラストレーター5名による空想絵物語アンソロジー『五つの色の物語』に収録された<赤の物語>『塑界の森』(芳納珪 / 服部奈々子)の冒頭部分を試し読みできます。明治期の日本を思わせる架空世界の画学生が主人公の青春ファンタジー小説です。収録されたイラストも一部掲載します。
きりんは花壇に行って、バラに尋ねました。 「きみの花びらを貸してくれない? 体に貼り付けて模様にしたいんだ」 「私の花びらは全部私のものよ。貸すなんてとんでもないわ」 きりん...
実家の納戸にあった古い植物図鑑を見ていたら、奇妙な見開き記事があった。並んでいるのは日本語の文字だが、さっぱり意味をなしていないのだ。ページの端に「電気を使わない光で照らしてみてくださ...
先週最終回を迎えた短編「栞の木」は、某出版社のショートショートコンテストに応募し、優秀作(入選の下)になった作品です。入選作は出版社のwebサイトに掲載されますが優秀作は掲載されず、でも選評は...
6 しおり――本名栞ミキの親戚を名乗る女性にうながされるままに、私は荷物を持って外へ出た。「煙に当てられて」重くなった頭と体は、きりっとした夜の空気に当たると、少ししゃきっとした。 私...
5 栞の葉の切れ端をたっぷり放り込んだ木組みに点火すると、七色の炎が上がった。 浴衣を着た女たちがその周りで踊り、男たちは勇壮に和太鼓を叩いた。私はしおりの隣に座って、食べたり飲んだり...