十身調御の仏 1/4話(第九十九則「粛宗十身調御」)

※タイトル変更のお知らせ

ページ開設以来「超訳文庫」のタイトルを使用して参りましたが、今般、「好雪文庫」に名称変更させていただきます。

変更となるのは名称のみですので、引き続きのご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

これに伴い、既刊の超訳文庫シリーズの名称も順次変更して参ります。
例:超訳【碧巌録】⇒ 別訳【碧巌録】

<名称の由来>
「好雪片片、不落別処」(こうせつへんぺん、べっしょにおちず)
碧巌録第42則に収録されている龐(ほう)居士の言葉です。

雪はひらひらと好き勝手に降ってくるように見えますが、それぞれが然るべき場所に落ち、あたり一面を銀世界に染め上げます。

ひとたび筆を離れた言葉もまた、ひらひらと宙を舞いますが、そのそれぞれが然るべき場所に落ち着き、見慣れた世界に新鮮な感動をもたらしますように。


別訳【碧巖録】十身調御の仏

龍が唸れば霧が巻き起こり、トラが吼えれば旋風が巻き起こるといいます。

修行を積んだ実力者とトップクラスの禅師の掛け合いは弓矢と弓矢が空中でぶつかるようなものであり、まるでオーケストラのような見事さです。

さて、実際にはどんな感じか見てみましょう。

粛宗皇帝が慧忠国師に尋ねました。

粛宗:「和尚さま、民衆を教え導く最高の仏というのはいったいどんなものなのでしょうか?」
慧忠:「旦那さま、そんなもの踏んづけてさらに上を目指しなされ!」

粛宗:「……どういうことでしょうか?」
慧忠:「そんなものにこだわっているようでは、まだまだですぞ! (笑)」

粛宗皇帝はまだ太子だった時から慧忠国師に心酔して教えを受けていました。

皇帝になってからはさらに慧忠国師を重んじ、みずから出て行って直接送り迎えするほどだったといいます。

そんな彼は、ある時国師に「民衆を教え導く最高の仏」とはどんなものか?」と尋ねました。

それに対する慧忠国師の答えが「そんなもの踏んづけてさらに上を目指せ!」だったわけなのですが、これはつまり「それを知りたいなら仏の頭を踏み台にして行け」ということなのです。

いつもはとても厳しい慧忠国師ですが、皇帝に対してはなんとも優しい態度をとられたものですね。

なのに皇帝にはピンときませんでした。

で、国師は仕方なく追加の解説をするハメになった次第。

そういえば黄檗和尚は激しい教え方で有名な師匠であって、若いころの臨済和尚の質問に対しては三回にわたって六十発も棒で打ったりしたものですが、時の大臣でありパトロンでもあった裴さんに対しては懇切丁寧に口で説明していましたっけ。

「民衆を教え導く最高の仏」とはつまり仏の持つ「十身調御」のハタラキのことです。

仏さまは相手のレベルに応じたキャラになりきって教え導く(調御する)ことができたとされ、たくさんの姿があるので「十身」の名があるのです。

―――――つづく


☆     ☆     ☆     ☆

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