とある僧が雪峰和尚の庵の門を叩いたところ、雪峰和尚は門を両手で押し開けながら飛び出してきて「何だこれは!?」と叫びました。
思わず僧が「何だこれは!?」と叫び返したところ、雪峰和尚は首をうなだれて庵に戻っていってしまったとか。
僧は仕方なく雪峰和尚の兄弟子であった巌頭和尚のところに行きました。
巌:「どこから来たのかね?」
僧:「山の南側から来ました。」
巌:「雪峰のところには行ったかね?」
僧:「行きました。」
巌:「雪峰は何と言っていたかな?」
僧:「門の中からいきなり飛び出してきて「何だこれは!?」とかおっしゃっていました。」
巌:「ほう、でどうなった?」
僧:「思わず私も「何だこれは!?」と叫んでしまいました。」
巌:「それで雪峰は何と言ったかな?」
僧:「いや、何も言わずにうなだれて庵に帰ってしまわれました。」
巌:「ああ、やはりあの時、ヤツにとどめの一句を教えてやればよかった。そうしておれば、ヤツは天下無敵だったというのに・・・」
この僧はそれからしばらく巌頭和尚のところにいましたが、旅立つ前に改めてこの会話を持ち出して教えを請いました。
僧:「和尚、以前おっしゃっていた「とどめの一句」というのはいったいどのようなものなのでしょうか?」
巌:「なぜもっと早く尋ねなかった?」
僧:「気軽に質問できるような内容ではないからですよ!」
巌「雪峰と私は同じ枝の上で咲いたが、散る時は別々だ。これが「とどめの一句」だよ。」
―――――つづく
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