長生きの仏と早死にの仏 3/3話(出典:碧巌録第三則「馬大師不安」)

雪竇(せっちょう)和尚は、まず「日面仏、月面仏!」と仰ってから、直ちに古代の皇帝たちのことなど何とも思わない境地に至ることができた」と仰っていますが、これは例えばビシッとひと言で答えを出した後で直ぐに解説をつけるようなものです。

彼はまた、なぜまたそのような回りくどいとも思えることを言ったのでしょうか?

梁山和尚はかつて「世界中の海に釣り針を垂れて、イキのいいドラゴンがかかるのを待っているのさ!」と言ったそうですが、これと今回の雪竇和尚のポエムは同趣旨でしょうか?

それとも全く違うでしょうか?

また、雪竇和尚はどさくさに紛れて「猛龍が棲む穴に追い込まれるような修行を二十年以上もやった」などと、自分の苦労話をアピールしていますが、これはいったいどのような効果を狙ったものなのでしょうか?

「猛龍の巣に潜入」といえば、大概は「光の玉」的な宝玉を持ち帰りそうなものですが、なんと古代の皇帝たちのことなど何とも思わない境地に至ることができた」程度の収穫しかなかったという残念さ・・・

この手の話は必死に答えを出そうと考え続けるだけではダメで、むしろ一旦横に置いて他のことをしようとした時に突然意味が分かったりするものです。

遠録公こと法遠和尚と、その侍者を務めていた清剖和尚の問答を以下に記します。

遠:「グレートドラゴンが大海を揺すりたてながら姿を現したぞ! さあ、オマエならどうする?」
剖:「ドラゴンを捕食するゴールデン・ガルーダが羽を広げて宇宙を埋め尽くした! で、ナニが姿を現すのですって?」

遠:「目の前にドラゴンが出現したらオマエはどうするのか、と聞いておるんじゃ!!」
剖:「・・・ハヤブサがハトを捕食することが信じられないと言うのですね? これは死なないと治らないレベルの重症だ!!」

遠:「ホウ、そこまで言うのであればワシは意見を引っ込めて引退させてもらうとしようかのう・・・」
剖:「これはまた、なんというドンガメ野郎でしょう! 登竜門を昇るのに失敗するとオデコにキズがつくといいますから、次はヘルメットをかぶって来てくださいね!!」

いかがですか? これこそが古代の皇帝たちのことなど何とも思わない境地に至ることができた」ってヤツです。

多くの人は雪竇和尚の真意を悟らずに「国家批判だ!」などと言いますが、それではあまりに感情的過ぎます。

禅月大師は言いました。

「キラキラの衣装を着て片手にハヤブサ。
遊んでばかりいるヤツらは世間をなめた顔つきで、態度も傲慢だ。
苦労知らずのボンボンに「古代の皇帝たちのことなど何とも思わない」とか言われてもなぁ・・・」

ほら、雪竇和尚も仰っているではありませんか。「これは完全に罰ゲームだよなぁ。自分では賢いと思っている修行者の皆さん、気をつけなはれや!!」、と。

大概の人は、自分でも気がつかないうちに「猛龍の住処」で暮らしています。

貴方がもし、「世間の事情を知り尽くし、数々の神通力を身につけた素晴らしい能力者」だったとしても、ここはひとつ、慎重に行くとしましょう。

<長生きの仏と早死にの仏 完>

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