別訳【夢中問答集】第七問 神仏は役に立つのか? 1/2話

足利直義:・・・しかし和尚、「お祈りしたって願い事などかなうわけがない。過去に作られた「業(ごう)」によって決定づけられた運命は、変えることができないからだ!」というのであれば、仏教なんてなんの役にもたたないということになるのではありませんかね?

夢窓国師:こらこら、またすぐそうやって短絡的に考える!

いいか、よく聞きなさい。「業」にも色々と種類がある。

• 今の人生の振り出し地点を決定したもの。
• 次の人生の振り出し地点を決定するもの。
• 次の次の人生の振り出し地点を決定するもの。

で、この三種類以外の「業」がもたらす結果は、操作することができるのじゃ。

過去に作られた「業」は、その軽重を問わず、決して何の結果も出さずに終わることはない。そのまま放置しておいたらマズイことになりそうな「悪業」による結果を好転させることができるもの、それこそが仏法と呼ばれるものなのじゃ!

そして、いかに仏法が強力なパワーを秘めていたとしても、それを使う人間たちに「反省」や「思いやり」の心がなければ、やはりろくな結果にはならないのじゃ。

ブッダと同時代に活躍した伝説の名医であるジーワカ(耆婆扁鵲=ぎばへんじゃく)は、あらゆる病気を治すことができたのじゃが、「病気」そのものの発生を抑えることはできなかった。とはいえ、患者はジーワカの言うとおりにしておれば、確実に病気の苦しみから逃れることができたのじゃ。

ブッダもまた、人々が数々の「業」を作ることをやめさせることはできなかったが、そこから発生する苦しみの解消方法を教授することはできたのじゃ。

ブッダは現在・過去・未来におけるあらゆる現象の因果関係を完全に見極めておられた。当然、人々に苦しみが発生するのは、そいつらの心に「反省」や「思いやり」が欠けているからだということもな。

だから、「オマエが貧乏なのは、前世でケチンボだったからだ!」とか、「オマエの身分が卑しいのは、前世で高慢野郎だったからだ!」とか、「殺生したから短命」とか、「やりたい放題だったからブサイク」とかの衝撃的な譬え話を叩きつけることで、人々の自省を促したのじゃよ。

彼の言うことをきいてマジメに努力するならば、「過去の業」なんかに振り回されることなく、自分で自分の運命を切り開いていくことができるようになることは疑いなしじゃ。

さて、今どきの連中はといえば、朝から晩まで悪いことばかり考え続け、ロクデモナイことばかりしでかし続けた挙句に、「金持ちになりたい!」とか「長生きしたい!」とかいって神仏にお祈りしている。そんなお祈りは、かなう方が不思議じゃな。

―――――つづく


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