足利直義:なるほど、つまり和尚は「日常生活の全てが修行だ!」とおっしゃるのですね?
それではお聞きしますが、和尚の属する禅宗はもとより、天台宗ほかの仏教各派においても、「全てを捨て去れ!」と教えますよね。
「日常の全てが悟りにつながる」というのであれば、いったい何を「捨て去る」必要があるのでしょうか? 捨てちゃったら修行にならないじゃないですか!
これはいったい、どういうことなのでしょう!?
夢窓国師:いやいや、もうちょっと物事を柔軟に考えることはできんのかいな・・・
結論から言うと、仏教における「法」と世俗における「法」は、全く同じものじゃ。
だから、日々の暮らしにおける出来事の、全てが修行だということになるのじゃ。
あんなアホみたいなことも、こんなしょうもないことも、とても嬉しいことも、極めてムカツクことも、それらのどれをとっても「修行」でないことは何ひとつとしてない。
だから、ぶっちゃけて言うなら、なにも捨てることなどないんじゃよ。
ただ、世の中はデキの悪い連中が大半を占めているので、そんな連中に向かって「何でもアリだ!」などと言おうものならそれはもう、修行や悟りとはかけ離れた、大変ことになっちまう。
だから昔から高僧たちは、とりあえず、「捨てなさい。とにかく捨てなさい! それもこれも全部捨てなさい!」と説いたのじゃよ。
本当は何も全部捨てることはないし、もっと言えば捨ててよいものなどないのじゃが、家や職場の掃除と同じようなもんで、「選んで捨てよう」などと思ったら時間ばかりかかってしまって、ちっとも片付かないからじゃ。
まず「捨てる」、これがクリーンアップの基本じゃ!
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