足利直義:真の悟りを得た人は、神通力、つまり超能力が使えるようになるのでしょうか?
夢窓国師:・・・なんじゃその八歳児のような質問は?
理屈っぽいオマエらしくもないのう。(笑)
仏教と敵対している天魔・外道も超能力を駆使しておる。
神通力があるからといって必ずしも「悟りを得ている」とはならないのじゃ。
小乗仏教における悟りの最高位である羅漢果(アルハット=あらかん)の域に達した者は神通力を得られるが、究極の悟りを得られていないので大乗仏教的には「真の悟りを得た人」とは呼ばない。
大乗仏教における菩薩には悟りレベルに応じて十三段階のクラスがあり、それぞれのクラスに応じた神通力を得ているが、これもまた究極の悟りを得られていないので「真の悟りを得た人」とは呼ばない。
ちなみに「神通力」とは以下の六種じゃ。
- 天眼通(てんげんつう):山や川を隔てた遠くの光景を見る能力
- 天耳通(てんにつう):山や川を隔てた遠くの音を聞く能力
- 他心通(たしんつう):他人の心を読む能力
- 宿命通(しゅくみょうつう):前世のことを覚えている能力
- 神境通(じんきょうつう):自由自在に移動する能力
- 漏尽通(ろじんつう):煩悩を断じ尽くす能力
天魔・外道はこのうち五つまで獲得しておるが、最後の漏尽通の能力がないのでそれを永遠に保つことができず、輪廻転生のサイクルからも離脱できない。
羅漢たちは世間的な煩悩を全て断じ尽くしておるが、究極の真理を悟れていないので真に漏尽通を得ているとはいえない。
菩薩たちもまた同じことじゃ。
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