別訳【夢中問答集】第五十九問 悟りを得れば超能力者になれる? 2/2話

昔の師匠は言ったよ。

「たとえ六つの神通力を得たとしても、まだそれ以外に「あの」神通力があるということを忘れるな!」、とな。

「あの」神通力というのは凡人も聖人も生まれつき平等に持っている能力じゃ。
凡人には少なくて、聖人は多いというものではない。

そしてその上に一切の能力、足の上げ下げから見聞知覚、種々の神通力に至るまでが乗っかっておる。

だというのに、凡人たちはそれを日々駆使して生活していることに気づかず、さらに超能力を求めようとする。

碧巌録に龐居士 (ほうこじ)が、「ワシは既に充分に超能力者なのだ。そしてその超能力をフルに発揮して、日常生活をこなしていくのだ!」と言ったというエピソードが載っておるが、これはそのことを批判してのことじゃ。

昔の師匠はこうも言ったな。

「人は誰でもみな、神秘的な能力を持っているのだ。円覚経で説かれている大光明蔵三昧とはつまりこの能力のことじゃ。仏たちの超人的な能力もみな、この大光明蔵から生まれてくるのだ」、と。

普通の人間が東と西がわかったり、白と黒を区別できたりするのも、みなこの能力のおかげじゃ。

なのに巷のアホどもは、それを忘れて胡散臭い超能力などを欲しがる。

その根本的な能力に気づかずにやるのであれば、たとえ身から光を放ったとしてもホタルと一緒なのじゃ。

それは神々も同じことで、どれだけ素晴らしい超能力を持っておろうとも、ついには滅びるときがきてしまう。

修行を極めた羅漢や菩薩たちも同じことじゃ。

彼らはみな、人よりちょっとイケている超能力を持ったがゆえに、元来もっと大きな超能力をもっていたことを忘れておるのじゃ。

そんなわけだから、大乗仏教を学ぼうとするのであれば、まずは「人は誰でもみな、神秘的な能力を持っている」ということを信じなければいかん。

そのことさえ徹底的に信じぬくことができれば、遠い過去から続く愚かさの連鎖を断ち切ることができるじゃろう。

そして全身から大光明を放って世間の人々を救い、天魔・外道の邪見を正すのじゃ!


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