足利直義:禅宗ではよく「本分の田地(ほんぶんのでんぢ)」という言葉を使います。
字面だけ見れば「本分」は本来果たすべき義務や役割のこと、「田地」は耕して収穫を得るための土地、つまり磨くべき自己の本質のことなのだと思うのですが、これは要するにどんなものなのでしょうか?
夢窓国師:聖と凡、迷いと悟りの区別もない境地には、本来呼び名などつけようがないし、世間にある何ものにも譬えようがない。
要するにアホどもを救うためのヒントとして「本分の田地」とか「一大事」とかの言葉をあててみただけのことじゃ。
「本来面目」とか「主人公」とかもそうじゃな。
聖と凡、迷いと悟りなどという概念は、全て意識上に浮かんだ仮の姿に過ぎないのじゃが、なまじ意識が途切れずに続くものだから、それらの概念が無秩序に立ち現れて人々を混乱させておる。
だからじゃよ、「『本分の田地』とはどんなものか?」などという質問が出てしまうのは。
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