そしてブッダはアーナンダにこう言った。
「遥かな昔から今まで、生きとし生けるものが漠然と輪廻転生の渦に巻き込まれ続けてきたのは、真の心を見失って知覚・考慮・分別のハタラキを心だと思い込んでしまったからなのだ。
心に関するふたつの根本を見失ったままで仏教の修行をしても、結局は小乗、外道、あるいは天魔の境地にしか到れない。
ふたつの根本とは何か?
ひとつめは「人は皆、生まれつき完全で汚れのない心を持っている」ということ。オマエを含めたほとんどの人々が見失ってしまっているのがこれだ。
そしてふたつめは「果てしない輪廻の元となるカンチガイ」。これこそまさに今、オマエが陥っている「知覚・考慮・分別のハタラキを心だと思い込む」ハタラキだ。
このふたつの区別をしっかりつけずに修行しても、ただ輪廻転生を繰り返すばかりで決して究極の境地には到れない。
例えば砂を炊いて飯にしようというようなものだ。どれほど時間をかけたところで「熱い砂」になるばかりで絶対に飯にはならない」
南岳大師の一乗止観には、「止観の修行を実践する者は、まず全ての意識を『汚れのない心』に定着せなければならない。さもなければ失敗に終わる」と書かれておる。
大日経の注釈本には「一般人、小乗の修行者や外道は不動の心を知らないばかりか、動く心もまた知らない」、「心とは意識を離れたものだ。考えて理解できるようなものではない」と書かれておる。
占察業報経には「心にはふたつの在り方がある。ひとつは真、もうひとつは妄だ。真とは「あるがまま」「汚れなく円満」「全ての場所に存在し、あらゆるものを生み出す」もの。
妄とは「知覚・考慮・分別するハタラキ」のことで、実体はなく、あらゆる間違いのもとだ」と書かれておる。
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