別訳【夢中問答集】第七十六問 禅宗とそれ以外の宗派の主張の違いは何? 2/4話

昔の師匠は言ったよ。「『達磨大師が中国に来て、人々のために何か特別なことを伝えた』というのは間違いだ。彼は『オマエが必死に求めまわっているものは、オマエを含めた皆が既に充分過ぎるほど持っているのだ!』とビシッと指摘しただけだ」、とな。

「皆が既に充分過ぎるほど持っている」のだと言う。

だから禅宗の修行者だけが持っているという考え方は間違いじゃ。
テキスト重視派だけが持っているというのも間違いじゃ。
それは農民が田畑を耕すところにあり、鍛冶屋が精魂込めて作業するところにもある。

言ってしまえば、人々の聞いたり見たり、寝たり起きたり、仕事したり遊んだり話をしたりといった日常生活の全てが、達磨大師が指摘した「究極の境地」なのじゃ。

いわんや、仏の教えを学ぼうとする人々をや、じゃ。

ところが、そういう事情を知らない連中は、ただもう世間に流されて空しく輪廻を繰り返しておる。

そういった状況を変えようとして仏さまが色々と教えてくれたのはよいが、今度はその教えに執着して身動きが取れなくなったりしておる。

だから、達磨大師はインドからやってきて、ズバリひと言「オマエ、もう持っとるやないか!」とツッコんだのじゃ。

これこそが「心をもって心に伝える教外の教え」というヤツじゃ。

教外といっても、特に変わったことを言っているわけではない。

変わったことを言うのが「教外」なら、それは単なる「珍しい教え」であって教外別伝とは呼べない。

禅宗も六代目以降は五派に分裂してしまっておるが、いずれの派閥も「オマエ、もう持っとるやないか!」の境地を伝えようとしていることに変わりはない。

なのに今どきの連中はそのことがわからずに、禅宗各派の優劣を語ってみたり禅宗以外の宗派との良し悪しを取り沙汰したりしておる。

達磨大師がこれを知ったらなんと言うじゃろうかの・・・・・・


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