雪峰(せっぽう)和尚がまだ若かったある日のことです。
雪峰くんは先輩の巌頭(がんとう)さんと一緒にでかけた旅先の山中で吹雪に阻まれ、粗末な小屋に何日も閉じ込められるハメになってしまいました。
巌頭さんはずーっとゴロ寝していましたが、マジメな性格の雪峰くんは横になることもなく、背筋をぴっちりと伸ばして座禅し続けていました。
巌頭さんがツッコミます。
「ヘイヘイ、兄さん!無理しないで横になって寝ろよ。そんな格好でずーっと動かないでいるなんて、まるで田舎の祠に祀られている土地神の像みたいだぜ。
それともナニかい?お前さんはそうやって土地神になりすまして、その辺の田舎モノのこどもたちをたぶらかそうとでもいうのかい?」
雪峰くんは血相を変えて怒りだし、自分の胸をドンと突くと言いました。
「うっせー、ボケ!オレ様はまだ「ココ」んとこがシックリきてねーんだ。
ゴロ寝してるヒマなんてねーんだよ!!」
巌頭:「おおっと、これはこれは・・・(笑)
オレはてっきり、お前さんこそ頂点に立つ男だと思っていたのだが、どうしてどうして。
いまだにそんなことを言っているようじゃ、まるっきり見込みなしだな。」
雪峰:「何だとこのヤロウ!殺すぞ!!」
巌頭:「まぁまぁ、落ち着け。
じゃあ、試しに何か気のきいたことを言ってみな。コメントしてやるからさ。」
雪峰:「よし、じゃあ言うからよく聞けよ!
オレ様はな、かつてあの塩官禅師の元で修行したことがあるんだが、彼が説く「空」の理論を聴いて、まさに「目からウロコ」だったぜ。で、一皮むけたってわけだ。
どうだ、スゴイだろう!?」
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