かつて達磨大師は師匠の般若多羅(はんにゃたら)からこのような予言を受けました。
「インドの仏教はもうダメだ。仏教の真髄を守るため、オマエには中国に行ってもらいたい。中国はとても広い国だが、ふさわしい人材がすぐに見つかるなどとは思わず気長にやることだ。
いつか金のニワトリが一粒の粟をくわえて、十方の羅漢たちに供養する日がくることだろう。」
そして、中国における仏教第六代伝承者である慧能和尚は、弟子の懐譲和尚にこう予言しました。
「今後、仏教はオマエのところが本流になるだろう。いつか一匹の馬が現れて、世界中の人を踏み殺す日がくることだろう。」
で、「金」州の出身者である懐譲和尚の弟子筋から「馬」大師が現れて、「智藏は真っ白け、百丈は真っ黒け」などと説いて世界中の人を身動き取れなくしてしまったというわけです。
雪竇和尚のポエムの中で臨済和尚が引き合いに出されていますが、これは彼がその「ツッコミ(機鋒)」の鋭さに定評がある人だったからに他なりません。
ある日、臨済和尚は弟子たちの前でこう言いました。
「いいかオマエたち! 赤い肉体の上に一人の「無位の真人」がいる。
そしてソイツは今この瞬間もオマエらの顔面から出入りしているのだ!
何のことかわからんヤツは、見せてやるから前に出ろ!!」
弟子の一人が前に出て、「すみません。何のことかサッパリわからないのですが・・・」というと、臨済和尚は演壇から飛び降りて首根っこをひっつかみ、「言え! 言ってみせろ!!」と叫びました。
ぐうの音も出ずにいる弟子を突き放した臨済和尚は、「ふん! 無位の真人、カチカチの一本グソが!!」と吐き捨てたとか。
この話を聞いた雪峰和尚、「なんと! それじゃまるで白昼堂々のヒッタクリ泥棒じゃないか・・・」と言ったとか。
このようにツッコミの鋭さ・激しさ抜群の臨済和尚なのですが、雪竇和尚はそれを踏まえた上で「馬大師のツッコミの方が凄い」と評したわけです。
「四句と百非を使わず」に関しても、アタマでああだこうだとこねくり回したところでどうにもならないことは明白です。
前にも言ったではないですか。「「質問」は「答え」の中にあり、「答え」は「質問」の中にある」のだと。
え? ではいったいどうやったら「四句」を離れ「百非」を絶することができるのか、ですって? そんなこと、現在・過去・未来の仏たちだってご存知ありません。w
雪竇和尚は「答えを知るのは世界で「オレ」だけ」だと仰っています。
まさかこの「オレ」がいったい誰のことなのかわからない、なんてことはないでしょうね?
そんなんじゃ、アナタもやはり馬大師に「踏み殺された」と言われても仕方ないですよ。(笑)
<馬大師の四句百非 完>
☆ ☆ ☆ ☆
※超訳文庫が電子書籍化されました。第1弾は『超訳文庫アングリマーラ Kindle版』(定価250円)です。どうぞよろしくお願いいたします。〈アングリマーラ第1話へ〉