猫の王さま1

猫の王様 クレーン謙

猫が、ある日の事、世界を征服した。

誰にもその原因が分からなかったのだが、世界中の猫達が、突然、言葉を喋り始め、人間よりも頭がよくなった。そして、猫は人間のペットである事をやめた。

二足歩行を始めた猫は武器を手にとり、人間に宣戦布告した。
進化した猫には超能力があった。
その目で相手を睨みつけると、その相手は身動きが取れなくなってしまうのだ。
まるでか弱いネズミのように、人間には為すすべが無かった。
そして次々と、人間の築いた国々は猫の手に落ちていった。

戦いを指揮していたのは、一匹の白くて美しいオスのペルシャ猫だった。
彼は「猫の王」と呼ばれ、その気高さとカリスマ性で猫達に敬われていた。
人間のテレビ放送局を占拠した猫の王がテレビカメラの前で世界の猫達に呼びかけた。

「・・・・・世界のわが同胞達よ、とうとう我らの時代がやってきた!
人間どもは我々を不当に扱い、何の罪もないわが同胞を何万匹も、いや、何百万もの仲間達を、自分たちのエゴのため、殺処分という名の元、虐殺を繰り返してきた!
実に許されざる行いである。
また、人間どもは自分たちの発展の為、地上の資源を取り尽くし、自然を汚し、他の種族を絶滅へと追いやった。
このような低俗な種族に、地球の支配を任せる訳にはいかない!
立ち上がれ!そして人間どもに思い知らせるのだ!」

テレビ放送を見た猫達は喚声をあげた。
「猫の王、万歳!!猫に栄光あれ!」

猫達の戦い方は実に狡猾で、機敏だった。
「地上最強」と言われていたアメリカ軍も猫の前では無力だった。
最新鋭の兵器も猫の超能力の前では何の役にもたたず、次々と米軍の部隊は壊滅していった。
もはや、人間の軍や兵器に勝ち目がないのは、明らかだった。
・・・・そして、米軍の最高指揮官であるアメリカ大統領が「完全無条件降伏」を宣言したその日、地球は猫のものとなった。

戦いに勝利した猫は戦争裁判を決行した。
A級戦犯として、猫を虐殺した人々が裁判官の前に立たされ、処刑を宣告されていった。
この時になり、ようやく人々は自分達の過去の行いを悔やんだが、もはや手遅れだった。
人間達は自分たちの築いてきた文明と文化を剥奪され、猫の奴隷として生きるか、衣服すら纏わず自然の中へと帰っていくしか道がなかった。

地上から人間の国々がなくなり、かわって猫の王国が建国された。
戦いを指揮したペルシャ猫が王国の王となり、直属の配下達が貴族として王国の運営を任されたのだった。

そして何年も経った。

――――つづく

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