オオカミになった羊(最終話)by クレーン謙
気がつくと、僕はどこかの海岸線に立っていた──ここの景色は、いつかどこかで見た景色だ。 ザーザー、と波音がする中、僕は一人潮風に吹かれ、砂浜に立っている。 しかし、しかしだ。僕は死んだので...
気がつくと、僕はどこかの海岸線に立っていた──ここの景色は、いつかどこかで見た景色だ。 ザーザー、と波音がする中、僕は一人潮風に吹かれ、砂浜に立っている。 しかし、しかしだ。僕は死んだので...
オオカミ族は戦の負けを認め、森へと帰って行きました。 決闘で命を落としたミハリの後を継いだマーナガルムは、困難を伴う戦後処理を開始します。 戦争が終わったとはいえ、依然として羊族を憎むオオカミが多...
果たし合いの地より帰還したショーンは、右目を切られ血を流していて、手には敵の首を持っていました。 月明かりに照らされたショーンのその勇姿を見て、羊兵達はショーンにひれ伏しました──それまでは羊兵達は...
十年も前にマヤが交通事故で死んでいた、と聞いたレイは自らの動揺を隠すように執務室の中を歩き回ります──執務室の中をコツン、コツン、とレイの靴音が響きます。 しかし、エリの方へと振り返ったレイは、今聞...
アンドロイド・エリはここ仮想現実の世界では、まだ本当の実体がないので、その像が安定できず半透明な姿でレイに向かい合っていました。 レイは子供の頃の姿のままで、少し悲しそうな表情を浮かべ今にも消えそう...
淡い月明かりが射す川のほとり、凍てつく空気の中。ショーンは弓矢をかまえ、ミハリの攻撃を呼吸を整えながら待ち構えていました。 ショーンは、かつてミハリに教わったように、気配を殺し、僅かな音も漏...
子供の姿へと変わったレイを、エリはまじまじと見つめながら内蔵した記憶チップに記録された、生前の思い出を検索します──膨大な記録の中に兄が子供の頃の画像がいくつか見つかりました。アンドロ...
ショーンはよく手入れの行き届いた弓矢を背に、そしてよく研がれた剣を腰にさし、ミハリが指定した場所へと向かいます。五千匹の羊兵達に、決して手出しをせぬように、と言い残し。 オオカミ達も、きっと決闘の行...
羊村村長ショーンはオオカミ族を討伐すべく、メリナ王国軍五千匹を率いヴィーグリーズの谷へと向かいました。若い羊までもが羊兵として徴兵されたので、ここメリナ王国の王都バロメッツは年をとった羊や雌羊...
──アヌビス族との作戦会合を終えたアセナがゲルに戻ると、ソールが目を覚まし静かに鼻歌を口ずさんでいました。ソールの隣では、まだ小さいアンジェリアがそれを聴いてます。 アンジェリアは、すっかり...