1周年特別編〜趣味は1回しか行ったことがないプーケット島でのダイビング

真下にできるプーケット島の影 photo by ぐっちー

「妄想旅ラジオ」ポッドキャスター ぐっちーが綴るもう1つのストーリー「妄想生き物紀行 1周年特別編〜趣味は1回しか行ったことがないプーケット島でのダイビング」

私の趣味はダイビングである。と言いたいところであるが、ダイビングライセンスを取ってからはまだ一度も潜っていない。私の住む近くにもダイビングスポットはあるにはあるが、北海道は水温が低いため快適に潜ることができる期間は限られている。更に水温が低いために装備も少し違う。できれば南国で潜りたいと思っている。

ダイビングライセンスを取得したのは2015年のことで、今から6年も前のことになってしまった。ダイビングはライセンスがなくても可能だが、機材のレンタルサービスなどを受ける際には必要となり、一般人は実質的にはライセンスがないと潜ることができない。ダイビングライセンスを発行する機関は多数あり、国際的に認められている機関であればどの機関のライセンスを取得しても構わないし、もちろんどの国で取っても構わない。私の場合タイのプーケット島でダイビングライセンスを取得した。

プーケット島はマレー半島の西側に位置し、マラッカ海峡の北端にあたる。ビーチリゾートが有名でマリンスポーツも盛んである。数多くの映画の撮影地にもなっており、まさにザ南国と言った場所である。私がプーケット島でダイビングライセンスを取得した理由はもちろん南国で潜りたいという夢の実現はもちろんのこと、ライセンス取得にかかる費用も魅力だったことである。東京でダイビングライセンスを取得しようとすると機材のレンタルなどを含め10万円近くする。ところが、プーケット島で私が取得した時は1万2千バーツだった。日本円にすると約4万円と往復の飛行機代を含めて同じくらいの金額で取得できてしまう。ダイビングライセンスも取得できて旅行もできるとなれば行かない理由はない。

ダイビングライセンスにはオープンウォーターダイバー、アドバンストオープンウォーターダイバー、レスキューダイバー、マスタースキューバダイバーなどの区分があり、それぞれ潜ることのできる深さが違う。ヒトは水中では呼吸できないので空気を詰め込んだボンベを背中に背負って、その空気を吸って潜ることができる。スキューバ(SCUBA)はself-contained underwater breathing apparatusの略で、日本語に訳すと自給式水中呼吸器となるだろうか。私が子供の頃はアクアラングという言葉を聞いていたが、これは商標名で、宅配便と宅急便の関係と同じである。

水中で空気を吸うことは一見簡単そうに思えるが、実は大変なことが起こっているのである。気体は温度が一定であれば体積が圧力に反比例する。つまり、圧力が高くなると体積が小さくなる。これをボイルの法則という。水面では1気圧の空気は水深10mでは2気圧となり体積は半分、20mでは3気圧となり体積は3分の1になる。どの水深に潜っても吸う空気の体積は同じなので、水深20mの空気を水面に持ち上げると空気の体積は3倍に膨れあがる。この時息を止めたまま浮上すると肺の中の空気が膨張して肺を損傷するのである。

また、空気は圧力が高いほど液体によく溶ける。その反対に圧力が下がると溶けていた気体が気泡となり泡となって出てくる。炭酸飲料の蓋を開けると容器の内側に気泡ができるのと同じ現象である。これをヘンリーの法則という。水中では圧力が高いのでボンベ内の空気が血液の中に多く溶ける。この時急激に水面に上がると血液中に溶けていた窒素が血管中で気泡となり、毛細血管をせき止めてしまい組織を損傷してしまう減圧症の恐れがある。これを防ぐため潜った水深と時間から水中で待機する時間や、次のダイビングまでの時間をコントロールする表や腕時計型のダイビングコンピュータなどがある。

このように、海の中に潜るという一見簡単そうな行為の中にも危険が潜んでおり、科学的なアプローチによって事故を防ぐ仕組みが設計されているのである。私自身もライセンス取得前まで口にレギュレーターをくわえて潜るだけだと簡単に考えていたが、様々な危険と隣り合わせでダイビングが行われていることを知り、ダイビングの企画を販売する会社について十分に情報を収集した上で申し込む必要があると感じた。

私がダイビングライセンスを取得してから1回も潜りに行くことができていないのはダイビングツアー会社の情報が十分得られていないということもあるが、もう一点大きな制限があるからだ。それはダイビングをした後、飛行機に乗るまで12時間から18時間あけなければならないからである。少ない休日でダイビングに行っても出発直前まで潜ることができないので長期の休みを取る必要がある。なかなか難しい問題である。

私がダイビングライセンスを取得したプーケット島では世界中でコロナウイルスが蔓延したことにより観光客が激減した。その代わり海では人間が来なくなったことからウミガメの産卵が各地で確認されているようである。旅行ができなくなって1年あまり経つが、そろそろダイビングに行きたいものである。第27回は妄想旅ラジオが始まって1年を記念して私の一人旅の様子をお届けしたが、このコラムも始まって1年経過した。1年はあっという間に経過したように感じるものの、旅行ができなくなった1年は長く感じる。早くコロナウイルスの終息が訪れ、南国でダイビングを楽しみたいものである。

(by ぐっちー)

<編集後記>

※このエッセイ「妄想生き物紀行」は、ポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」の第27回「1周年特別編 と関連した内容です。ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。妄想旅ラジオは、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組です。

ぐっちー作「妄想生き物紀行」第27回「1周年特別編〜趣味は1回しか行ったことがないプーケット島でのダイビング」いかがでしたでしょうか。

今回もお読みいただきありがとうございます、編集担当オーナー雨こと斎藤雨梟です。

こんにちは!

妄想旅ラジオ第27回一周年特別編はぐっちーさん10年ぶりの一人旅レポートで、なかなかスリリングな場面も多くおすすめです。本エッセイ「妄想生き物紀行」の方はだいぶ趣が変わり、6年経った今、妄想感多めでお届けいたしました。

プーケット島は北緯7度54分、月平均最低気温が年間を通して25度程度という常夏の島。コロナ禍の中で、この(2021年)7月から試験的に外国からの観光客を受け入れるとのことです。本当に早く自由に安全に旅行ができるようになってほしいものです。ぐっちーさんの撮影したページトップの写真は本当に真下にできる影が見どころですが、「影を撮影」というのも概念ぽくて面白いです。旅でもろくに写真を撮らない私にも、何だかこれを撮りたかった気分が伝わってきます。

Twiterでぐっちーさんと話そう企画

さて今回も、ぐっちーさんとみなさんと、Twitterでお話したいと思います。1回しかしたことないけどこれが趣味、むしろしたことないけど趣味、くらいの妄想感溢れるトピックをお待ちしております。もちろんダイビングについて、ボイルの法則についてなどの話題も! 参加方法はTwitterに書き込むだけ、なので初めての方も、ラジオお聴きのみなさまも、エッセイを読んでの感想、ぐっちーさんへの質問やツッコミなど、ぜひお気軽に。お待ちしています!

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