ウシとクマは異種共生と異種間闘争のシンボル ぐっちーさんと話そう<55>

クマ対ウシ、ならぬクマラ対クダン illustration by Ukyo SAITO ©斎藤雨梟

Twitterでお話しました

こんにちは。今週もよろしくお願いします!

みなさまこんにちは。
「妄想生き物紀行」編集担当、ホテル暴風雨オーナー雨こと斎藤雨梟です。

今回も、ポッドキャスター・ぐっちーさんのエッセイ「ウシ〜ウシの家畜化とヒグマの進化」を読んで、ぐっちーさんにあれこれお聞きしたもようを、お伝えいたします。

先週のぐっちーさんのエッセイをお読みいただくとより楽しめる内容です。

ぐっちーさん、よろしくお願いします

ウシはただのホームベーカリーではない

先週のエッセイでぐっちーさんが提唱した「ウシはホームベーカリーである」説。草ばかり食べているのにあの巨体をキープしている秘密であるところの微生物がポイントになっていますが、そこでシャルル大熊さんからの質問です。

その微生物、超便利。というか、ないと困ります。後天的に獲得するとしたら、獲得しそびれたら終了という気がしますが。

え、生まれつきではないのですね? 親と共有する機会を逸すると大変そうなのは予想通りですが、そんな場合にもちゃんと治療方法があるとは。その名も糞便移植とは……。

本当に、あんまり過ぎます。直裁にもほどがあります。手術を「切る」と言うことさえ婉曲に感じられるくらいでは。

輸細菌。なんでそれじゃダメだったんでしょうかと考えてみましたが、

「輸細菌」ぽいのが他にもあるからでしょうかね。ワクチンなんかも輸細菌みたいなものですしね。

そしてウシ、ただのホームベーカリーじゃありません。小麦粉と水と、あとはバターとか入れればいいんです。イーストはいらないんです。高性能です。

ふわゆさんからもコメントいただきました。

口移し禁止は聞くようになりました。ということは、虫歯やピロリ菌が激減しているのでしょうか? 大人になって時代につれて常識が変わることを経験してしまうと、後の時代に「口移しとか関係なかった」と結論される可能性もまだあるかも、と思ってしまいます。観察を続けることとします。

そうなんです、この話もけっこう衝撃でした。帝王切開で産まれると菌をあまりもらえないそうなんですが、そんな人はいくらでもいますし、別にそれですごく困っているという話も聞きません。でも、何かが少し違うのかもしれません。共生する菌によって何かが変わるならば、時代を経て人間が変化したり、同じ時代でも「国民性」や「県民性」などの地域差があるのは、案外「菌が違う」のかも? 風土の違いとは即ち菌の違いなのかも? などと時々思います。

シャルル大熊さん、ふわゆさん、どうもありがとうございます!

現役猟犬は日本にいるのか?

続いて、ホテル暴風雨・風オーナーからの質問です。

マタギとクマの戦い、私も何かで読んだことがあります。犬は大事な相棒というイメージですよね。

ふーむ、今時猟犬というのはいないんでしょうか。

マタギ犬といえば秋田犬のルーツと聞きますし、他の日本犬はたいてい猟犬として確立した犬種なのではなかったでしょうか。日本犬以外でも、ビーグルとかポインターとか元々猟犬だった犬種は今も大変愛されていますが、実際猟をするという話は、確かにあまり聞きません。優れた嗅覚を使って働く犬といえば警察犬がいますね。風オーナー、どうもありがとうございます!

異種間闘争に惹かれる謎の心理

さて、OSO18の話をネットニュースなどで読み、こんなふうに感じてしまう人は、いないでしょうか? ぐっちーさんはどうでしょう?

これは、クマの被害が身近であれば変わってしまう感じ方なのか、どうなのか?

うーむ、そりゃそうですよね。動物による被害でありながら「連続殺人事件」くらいの衝撃的な事件だったのだと思います。

この本、本当に怖い!

OSO18も本当に怖いですよね。

さて、私自身はクマの被害を受けたことも、目の当たりにしたことも、あまり身近に感じたこともありません。ですがこの、「冒険小説的な投影」は現実感の薄さだけが原因とも思えないのです。

改めて整理すると、

  • 人間にダメージを与え得る力を持つものが破壊的行為をする
  • しばしばその行動は人間の理屈ではよくわからない
  • 人間には立ち向かう力が不足しており、被害に対し十全な対処をすることも困難

というような状況を、ちょっと面白いと感じてしまう感性が自分にはあると思います。例えば、害獣・害虫・アレルギー・病原性細菌やウイルスなどに対してです。私もコロナは怖いし、アレルギーに花粉症に虫刺されにとけっこう困らされ、天井裏にネズミが住み着いてひどい目にあったこともあります。もっと深刻な被害が人命を脅かしている状況はもちろんどうにか解決してほしいし胸が痛みます。が、それでも何だか一方で、純粋に現象だけを取り出して見れば興味深いのです。

あまり大声で言うと「非国民」ならぬ「非人間」と謗られそうですが、よくよく考えてみると、突然現れた謎の大怪獣に街中を破壊され尽くすという映画にこれだけ熱狂して来た人類です。私だけでなく、どこかにそういう興味を持っているのではないでしょうか。「破壊願望」「理解を超えたものへの畏怖・リスペクト」などもこの興味の兄弟のように思えます。

で、なんでこうなったと言われそうですが、そんな考察をふまえて今回のページトップの絵を描いてみました。怪獣映画のポスターっぽく。クマはわりとストレートにクマですが、やられっぱなしのウシが不憫すぎるので少し強そうにしてみました。小松左京著「くだんのはは」で有名な、予言をする人頭のウシ「くだん」のイメージです。

「くだんのはは」収録短編集

怖い本を二冊も紹介したくせに、絵は怖さ要素ゼロの仕上がりとなりました。

どっちが強そうかといえばどっちもそんなに強くなさそう

では今回はこれにて。

次回のエッセイのテーマは「チョウ」です。妄想旅ラジオ第56回「チョウ」では、とにかくぐっちーさんがチョウの話を全然しない点が聴きどころ。ハラハラします。予習がてら、ポッドキャストもぜひ聴いてみてください!

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