夏休み特別編〜いぼ痔が痛いか痛くないかの分かれ道は発生過程における外胚葉由来か内胚葉由来かである理由

「チャート式シリーズ 新生物 生物基礎・生物」(数研出版)より

「妄想旅ラジオ」ポッドキャスター ぐっちーが綴るもう1つのストーリー「妄想生き物紀行 第25回 夏休み特別編〜いぼ痔が痛いか痛くないかの分かれ道は発生過程における外胚葉由来か内胚葉由来かである理由」

私は「じぬし」である。ただし、他人に土地を貸して利益を得ている訳ではない。毎年のように痔を発症するからこう宣言する。痔は大きく分けて3つに分類される。1つ目はいぼ痔、2つ目はきれ痔、そして3つ目が痔ろうである。私はこの1つ目のいぼ痔を患った。ちなみにいぼ痔は更に内痔核と外痔核に分類され、私の場合はそのどちらも経験済みである。

ところで、有性生殖を行う動物は卵と精子が受精し、その後卵割と呼ばれる細胞分裂を繰り返して発生する。この発生過程において分裂した細胞は将来皮膚や神経になる外胚葉、消化器や呼吸器になる内胚葉、骨、筋肉、循環器になる中胚葉に分かれる。肛門は外胚葉由来の皮膚と中胚葉由来の腸が交わる接点であり、肛門内部にある歯状線と呼ばれる継ぎ目から外側が外胚葉、内側が内胚葉である。そしてその継ぎ目が痛みを分ける線でもある。どういう事かというと、外胚葉由来である皮膚には神経が通っていて痛みを感じるが、内胚葉由来である腸には神経が通っていないため痛みを感じないのである。

いぼ痔には内痔核と外痔核があると紹介したが、歯状線の内側、つまり内胚葉領域のいぼ痔を内痔核、外胚葉領域のいぼ痔を外痔核と分けている。いぼ痔は基本的に毛細血管がうっ血していぼのような形状になるが、内痔核の場合はあまり痛みを感じない。一方外痔核は椅子に座っていられないくらい痛い。外痔核の症状で病院に行った際、受付のお姉さんに「座ってお待ちください」と言われた時の絶望感は二度と味わいたくない。今では親切なお姉さんに殺意を抱いたことに自己嫌悪し、反省している。

話は受精卵の発生に戻る。受精卵は受精直後から細胞分裂を繰り返し、先述の三胚葉に分化していくのだが、その過程で卵の一部分が内側に陥入し内胚葉に分化する。この陥入した部分のことを原口(げんこう)と言う。軟体動物や節足動物などは原口が将来口になり、棘皮動物や脊椎動物などは原口が将来肛門になると私が高校生の頃習った。前者を先口動物あるいは旧口動物、後者を後口動物あるいは新口動物と呼ぶ。人類は脊椎動物なので後口動物である。つまり、原口は肛門にあたる。私がまだ小さな細胞の塊だった頃、肛門から内側に細胞が移動して、腸や肺を形成していったのである。

ところが、人体の発生に関する教科書を見ると、胎児の頃に肛門部分では外皮が窪み、原腸が伸びてきて、最終的には結合して肛門ができると書いてあった。そしてその結合部が歯状線であると記載されているのである。これは原口が肛門になると高校で習った知識と矛盾するのである。

私はこの矛盾を解消すべく色々と調べたのだが、明快な回答を得ることはできなかった。しかし、ある仮説にたどり着いた。三胚葉に分化するのは発生の極めて初期の段階のため、原口は一度閉じられてしまい、発生の中期で再び腸と皮膚が結合して一本の消化管になるのではないかと推測する。

さて、消化管は口から肛門までの一本の管である。肛門の形成については先述の通りだが、口の形成についても気になった。従属栄養生物である人類は物を食べて消化することで生命維持が可能となる。口、喉、食道、胃、小腸、大腸、肛門と消化器官を並べてみても、どこからが内胚葉由来で、どこからが外胚葉由来なのか想像がつくだろうか。そのヒントとなるのが痛みである。肛門の場合は内胚葉と外胚葉の境目が歯状線であったが、口の場合はどうだろう。口の中は痛みを感じるので外胚葉由来と推測できる。次に喉はどうだろう。喉も風邪をひいた時に痛みを感じるので外胚葉由来だろう。

私は毎年健康診断で胃カメラを飲んでいる。胃カメラは口から細長い管を挿入し、食道を通って胃と十二指腸の入り口までをカメラで撮影する検査機器である。鼻から入れる胃カメラもあるが、私は毎回口から入れる胃カメラを選択している。口から細長い管を入れていくわけだが、喉のあたりが一番つらい。嘔吐反応と言って喉にカメラがあたると反射的に吐き出そうとする反応があり、この時口からよだれは出るは、目から涙が出るはで、検査のクライマックスである。しかし、カメラを飲み込んでくださいと言われて飲み込むと、あら不思議、食道からはほとんど痛みを感じないのである。

つまり、食道からは痛みを感じないので内胚葉由来と推測することができる。私の実体験から導き出された推測に対して、発生の教科書では食道から内胚葉由来であると記載されていた。実際はもっと複雑のようで、私の頭では完全に理解することは困難であったが、概ね実体験と一致していた。

私は胃カメラを飲んだ病院で一度だけ大腸カメラ検査も受けたことがある。その詳細については別の機会に紹介したいが、胃カメラも大腸カメラも同じ診察室で行われた。使われる機器も非常に似ており、検査終了後、先生にこう聞いてみた。

「先生、胃カメラと大腸カメラは別の機械ですよね」

すると、先生はこう答えたのである。

「良く洗ってあるから大丈夫ですよ」

(by ぐっちー)

参考文献:「チャート式シリーズ 新生物 生物基礎・生物」(数研出版)(ページトップ画像はこの書籍からの引用です)

懐かしのチャート式シリーズ。確か赤チャートとか青チャートとかがありましたが、これはどれなんでしょう?

<編集後記>

※このエッセイ「妄想生き物紀行」は、ポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」の第25回「夏休み特別編 と関連した内容です。ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。妄想旅ラジオは、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組です。リンク先に聴き方も詳しく載っていますので、ぜひ合わせてお楽しみ下さい。

ぐっちー作「妄想生き物紀行」第25回「夏休み特別編〜いぼ痔が痛いか痛くないかの分かれ道は発生過程における外胚葉由来か内胚葉由来かである理由」いかがでしたでしょうか。

今回もお読みいただきありがとうございます、編集担当オーナー雨こと斎藤雨梟です。

こんにちは!

妄想旅ラジオ第25回「夏休み特別編」は、ポチ子さんがワルシャワの動物園に行ったお話がメインでしたので、ぐっちーさんのエッセイは果たしてどんなお話が来るのか、ワクワクしていましたが、そう来たか! 確かにオープニングで出た話題でした。

狭くて暗くて暖かいところにいる体験を「母胎回帰」になぞらえるのはわりとよくある、というかありがちすぎてあ〜はいはい、と右の耳から左の耳へ出てしまう私ですが、胃カメラで受精卵からの発生を追体験とはさすがぐっちーさん、唸りました。

ラストのひとこと、先生の定番ギャグなんでしょうか。くれぐれもよ〜〜〜〜く洗ってくださいね。

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さて今回も発生について、三胚葉について、いぼ痔について、内痔核・外痔核・きれ痔・痔ろうその他何でもこ〜い、とTwitterでお話したいと思います。参加方法はTwitterに書き込むだけ、なので初めての方も、ラジオお聴きのみなさまも、エッセイを読んでの感想、ぐっちーさんへの質問やツッコミなど、ぜひお気軽に。お待ちしています!

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