チヨさんの超能力講座:なぜスプーンを曲げるのか!?

みなさまこんにちは。
ホテル暴風雨客室係チーフ、チヨです。

今日は朝から楽しく実験をしています。といっても、テンペストさんに見つかったらお小言をくらいそうな実験ですけれどね……

メジロ:「こんにちは。ちょっとお聞きしたいことがあるのですが、いいでしょうか」

チヨ:「メジロくんかね、お入りなさい」

猫丸:「こんにちは。気絶と睡眠の違いにまだ合点が行きませんが大丈夫です」

チヨ:「おやおや、猫丸様まで!」

猫丸:「採れたての超能力を持ってきたのです」

チヨ:「なんと、ありがたい!さっそくおやつにいただきましょうか」

メジロ:「えっ、超能力っていうか、これって曲がったスプーンですよね、食べるんですか?」

チヨ:「メジロくん、これはそんじょそこらのスプーンじゃないんだから。鉱物と植物、しかもとびきりの果物とのハイブリッドみたいなスプーンですよ。甘くて美味しく、もちろん鉄分も豊富!さすが猫丸様の宇宙力は一味違いますねえ(ボリボリボリ)」

メジロ:「はあ、そうでしたか……(食べてる!)」

チヨ:「ところで、聞きたいことというのは?」

猫丸:(ボリボリボリ)

メジロ:「……それが、超能力のことでして」

チヨ:「タイムリーだね〜!今ちょうど実験をしていてね。それで、何だって?」

メジロ:「どうして超能力者はスプーンなんて曲げるんでしょうねえ。何かもっと、すごいことをしたり、せめてもっと強そうなものを曲げたらいいと思うんですが」

猫丸:「モグモグモグ!?(※メジロさん!?)」

チヨ:「それはなかなかいい疑問だね。今も、フォークやナイフは曲げず、スプーンだけを選択的に曲げる電磁波の実験をしていたんだよ」

メジロ:「チヨさんは、その並外れた才能を、有意義なことにもつまらないことにも公平に注ぎ込むところが素晴らしいと思います」

チヨ:「ハッハッハッ、魑魅魍魎が跋扈するこのホテルでそんなに正直では、さぞかし面白い目にばかり会うだろうねえ〜、ゆかいゆかい。そもそもスプーンを曲げてみせるパフォーマンスは、今から四十数年前、テレビで放映されて人間界で瞬く間に大ブームになったんだよ。私は見事だったと思うね、スプーン曲げという選択は」

メジロ:「そうでしょうか?」

チヨ:「誰もが見たことがあって、どこの家にもあって、こんなものに種や仕掛けを隠せるはずがないと大多数の人が信じるアイテムだと思わないかね?」

メジロ:「なるほど、大掛かりなものだと、かえって仕掛けがあると疑われてしまいますね。スプーンなら、どれどれと自分でも手軽に試せて、やっぱりできない、とすぐに確かめられますね。でもそれなら、ナイフやフォークでもいいのでは」

チヨ:「いやいや、フォークは刺すもの、ナイフは切るもの、いわば武器にもなる道具。そんなものを曲げたらちょっと怖いよ。武器の破壊というのも一種の武力攻撃になるからね、超能力が凄いのか攻撃が怖いのか、焦点がぼやけてしまう」

メジロ:「そんなものでしょうか、フォークが曲がったって超能力の凄さはアピールできませんか?」

チヨ:「たとえばだよ、幽霊が出たら怖がる人は多いよね」

メジロ:「そうですね」

チヨ:「死んだはずの、どこか影の薄い人が恨めしげな表情でもの言わず見ている怖さは、純粋な幽霊の怖さだよ。でも、幽霊が剣だの槍だのを持って襲ってきたらどうだろう?」

メジロ:「うーん、幽霊じゃなくても、剣や槍を持って襲ってきたら怖いです」

チヨ:「ほら、それが幽霊の怖さがぼやけてしまった例だよ。フォークやナイフを曲げるのでは、超能力の凄さ、不思議さを薄めてしまう。しかも、曲がっていたって武器だと思えば本当は使えなくもないでしょう。その点スプーンは、食べ物をすくうという唯一の機能が超能力で台無しになるわけだ。曲がったスプーンで食事なんかできやしないし、かといって他の何にも使えない。食という、命に関わるものでありながら、もっとも単一目的的で原始的な道具を無用にするという不気味な演出。その上どこか間が抜けていて、かなりの迷惑行為にもかかわらずパフォーマーが危険人物や悪人には見えない。見事なものだと思うねえ」

メジロ:「なるほど、そんなふうに考えたこともありませんでした……あっ!!

猫丸:「幽霊ならスタッフに入るのですか〜?」

メジロ:大変だ、猫丸様が泣いている!!そうでした、猫丸様のご質問に私ではお答えしかねたのでチヨさんに聞きに来たんでした。すみません、ついついそれを忘れて、私の積年の疑問を解決したくなってしまって」

チヨ:「そんなことに長年疑問を持っていたのかい。それより、猫丸様の質問ですと?まあ、お話しくださいな。ふむふむ、何ですって、臨時スタッフになりたい……というかそれはつまり……」

なるほど、そういうことでしたら、私が一肌脱ごうではありませんか!
さて、どんな作戦で行ったものか、ワクワクしてきましたよ。

チヨでした。


猫型宇宙人・猫丸さんの相談がついにチヨさんのもとにたどりついたようですが、さてどうなるか?

猫丸さんの悩みについてはこちらのマンガを

謎の逗留客、アルバートさんがついにその「秘密」、ホテル暴風雨へやってきた理由を語り始めますが、語る相手が相手だったおかげで話はすっかり妙な方向に!?

メジロさんが悩みを聞くことになった経緯や、天然オーガニック(?)の曲がったスプーンについてはこちらをご覧ください。

ベルボーイたちの姿が見当たらないけれど、どこにいるのか?宇宙人はスタッフに入るのか?そして超能力係とは何なのか?謎が謎を呼び、かつ、ひとつも解決しませんが、アルバートさんの思惑やいかに。

ホテル暴風雨ではみなさまからのお便りをお待ちしております!

「ホテル暴風雨の日々」続きをお楽しみに!暴風雨ロゴ黒*背景白


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